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安全性、国・東電は内外に伝えよ(内田 雄基 ニッポン放送アナウンサー)2023年3月

浪江町

 福島は、第1原子力発電所事故から3月で12年を迎える今、貯蔵されるALPS処理水の海洋放出という新たな課題に直面している。

 政府は「放出開始は今年春から夏頃」とする方針と決めた。浪江町請戸港の水産業者「柴栄水産」柴強代表は処理水の放出に対し、「物理的に仕方ない」と一定の理解を口にした。その一方で、「本音としては流してほしくない。これまでは何だったのか」と風評と戦ってきた12年を回顧しながら複雑な胸中を語った。

 地元は、処理水の安全性よりも政府や東京電力の説明の姿勢に不安を感じているように見えた。浪江町の吉田栄光町長(写真)は、東電に対し厳しい表情で「『風評は空言だ。(放出は)問題ありません』とはっきり言えば風評が収まるかもしれない」と科学的に問題がないのであれば、安全性を国内外に明確に伝えるよう求めた。説明不足が原因で、常磐ものの魚が食卓に並ばなくなってはいけない。

 道の駅で食べた請戸のしらすは、説明不要なほど美味しかった。

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