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東京電力福島第一原発取材団/タンク林立、廃炉の遅れ実感(井田 徹治 共同通信社編集委員)2021年4月

 東京電力福島第一原発事故から10年になる今年の日本記者クラブの取材団による現地取材は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下で行われた。取材現場は第一原発のみ、2日間に分け、参加者を計10人に限るという異例の形となった。

 原発敷地内は汚染されたがれきなどが撤去され、地面をモルタルで覆うなどした結果、現在は敷地の9割程度で防護服と全面マスクは不要となり、一般の作業服と防じんマスクで作業できるようになった。

 

■1、2号機燃料搬出、10年後ろ倒し

 

 だが、廃炉に向けた作業は順調とは言えない。福島第一廃炉推進カンパニーの木元崇宏さんによると、2月に3号機の原子炉建屋のプールに残っていた使用済み核燃料の搬出が終了した。だが、1、2号機には千体を超える燃料が残ったままだ。2号機からの取り出しのため、大型構造物を建屋の隣に建設、横の壁に開口部を作って取り出すという新たな手法で進められることになった。17年度中に開始としていた1、2号機からの搬出は、それぞれ27~28年度、24~26年度と、最大10年程度後ろ倒しになっている。

 汚染が激しい原子炉周辺に地下水が流れ込んで発生する汚染水の問題では、流入前の地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス」、建屋周囲の土壌を凍らせる「凍土遮水壁」などが一定の効果を示し、一時は1日約540㌧に上った発生量は約140㌧に減少している。

 最大の課題は、多核種除去設備(ALPS)で処理した後の汚染水の処分だ。敷地内には保管する巨大なタンクが千基以上林立し、約124万㌧たまっている。北側の森林を伐採して新たな廃棄物保管施設の建設などを始めたこともあり、東電は、敷地にタンクを新設する余裕がなくなり、22年秋以降に計約137万㌧の容量が満杯になると予想している。

 福島、宮城両県で震度6強を観測した2月13日の地震は、タンクのずれや1号機の炉内の水位低下などの影響をもたらし、地震国の原発が抱えるリスクを改めて思い起こさせた。事故から10年を経ても、第一原発の危機的な状況は続いている。

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