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原始的で地道な復興作業(日本農業新聞農政経済部 髙梨森香)2020年3月

 「一番被害に遭った町が一番迷惑な施設を受け入れている」。双葉町の伊澤史朗町長の言葉だ。

 

 汚染廃棄物や土壌を仮置き場から移し保管する中間貯蔵施設の大熊3工区・土壌貯蔵施設(大熊町)。元は民家や田畑で、暮らしがあった場所だ。吹きさらしの広大な更地に10㌧ダンプで1日1500袋もの汚染土壌が運び込まれる。敷き固めた区画に雨よけの遮水シートをかぶせていく。拍子抜けするほど原始的で地道な作業の連続だ。あと2年でおおむねの搬入作業は終わるらしい。

 

 だが、至る所に汚染物の真っ黒な土のう袋がいまだうず高く積み上げられている。物々しい光景に気もめいる。

 

 3月4日、双葉町の一部区域で避難指示が解除され、町の再建が始まった。とはいえ貯蔵物の県外処分先が決まらない現状では町民も待ち焦がれた春を喜べない。復興の兆しに、あまりに似合わないこの施設で粛々と復興に尽力する人々の姿もまた忘れられない。

 

 夜、東京に帰ってきた。電飾の並木道、五輪マスコットのポスター、帰宅を急ぐ人波。不公平だと思った。

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