ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。


第4回アジア取材団(2005年3月) の記事一覧に戻る

日本市場への熱い視線(副団長 読売新聞 杉山美邦)2005年3月

マンモハン・シン現政権を一言で特徴づけると、「長老政治」だという。

 

これは、榎泰邦・駐インド大使の見立てだ。主要閣僚には、閣僚の経験のあるベテランがそろっている。新鮮味がないものの、安定度の高い政権だという。

 

取材団は、ナトワル・シン外相とカマル・ナート商工相の主要2閣僚に会った。両閣僚の口から発せられたのは、対日関係を太くしたいとの強い期待感だった。

 

シン外相は外務官僚出身で、73歳と“長老政治”を代表する閣僚だ。日本との経済関係について「現在の貿易総額が年40億ドル程度にとどまっている。5倍に拡大してもおかしくない」と現状に不満を示し、「経済、貿易、安全保障の面で協力できる」と様々な分野での交流を深めたいとの意向を表明した。訪日の際に川端康成とあったり、三島由紀夫の小説を読んだことも紹介し、日本通であることをしきりに強調した。

 

一方のナート商工相は繊維担当国務相などを経験し、経済改革の先頭に立っている。「日本とは自由貿易協定(FTA)も含め、話し合っていきたい」と、経済関係の拡大に意欲を示した。自国が得意とするIT産業に関連し、「国民に日本語を教えて、日本市場を獲得できるようにしたい」と、日本市場の開拓に積極姿勢を見せた。

 

両閣僚が日本へ熱い視線を送ったのは、経済大国を目指す上で、日本の資本や技術が欠かせないと見ているのだろう。日本にとっても、中国と並ぶ大市場への飛躍が期待されるインドと関係を深めるのは有益な選択になるに違いない。

 

日本がインドからの発言を真剣に受け止める。その必要性を、今回の視察で感じた。

ページのTOPへ