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バンガロールのITとバイオ(副団長 共同通信 細田昌夫)2005年3月

「物作りで中国が『世界の工場』なら、インドはソフトウエアを中心とする『世界のIT(情報技術)サービスセンター』としての地位を着々と築きつつある」(小島眞拓殖大教授)―。輸出も含め約200億ドル(約2兆1000億円)規模のインドのIT産業は、年率20%以上で急成長している。

 

IT人材が約42万人不足(2003年総務省推計)している日本に対し、インドの強みは優秀なIT技術者を毎年20万人前後輩出する人材の豊富さと、米国や日本の3分の1から4分の1という人件費の安さ。経費削減や業務効率化などを狙い「世界の売上高上位500社の半数以上がインドにアウトソース(外部委託)している」(米系証券)との指摘もある。

 

そのインドのIT企業が日本での事業拡大を狙い、社員の日本語や日本文化の教育に力を入れている。IT企業集積地バンガロールのウィプロ・テクノロジーズ(約3万9000人)もその1社だ。

 

10か月間の集中学習により、日本語が話せる技術者は約100人になった。同社は、日本関連ビジネスの売上高に占める割合を現在の約4%から、段と拡大させる計画。

 

バンガロールで注目されるのはIT関連企業だけではない。「インドの発明の母」の異名を持つ女性科学者キラン・マズムダール会長が1978年に創業したバイオ・医薬品大手バイオコン(約1500人)は、米食品医薬品局(FDA)などの厳しい基準に適合した生産施設を持ち、コレステロール底下剤や、口や頭部のがん治療薬、経口インスリンなどの医薬品開発を推進。米国企業との提携ではインド最大の抗体生産施設を設け、がんのワクチン開発につなげる考えだ。

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