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結婚も職業も制限され(産業新聞 大柳聡庸)2005年3月

 

「生水には気をつけろ」。インド出発前から、仲間から口うるさく言われていたが、到着して2日目に腹を壊してしまった。もちろん生水を口にしたわけではない。が、食事が合わなかったのか、自分の貧弱な体をうらめしく思いつつ、インド取材が始まった。

 

インドは人口10億人超、GDPの成長率は、5%超を維持している。最近ではIT産業を中心に発展を遂げ、同じく急成長する中国と比較されることも多い。インドにまつわるいろいろなイメージを持っていたが、カースト制度が、深くインド社会に入り込んでいることを、改めて実感した。

 

カースト制度は階層によって結婚も職業も厳しく制限される。経済発展とともに、貧富の差が拡大しているが、低いカーストの人が就ける職業は限られるため、格差は縮まらないように思われる。憲法で差別が基本的に禁止されているように、いずれはなくなる制度だと考えていた。

 

ただ、職業制限が、良い意味でのワークシェアリングになり、貧富の差が拡大しても、社会が大きな混乱に陥らない側面もあるようだ。低いカーストでも、それを人々が受け入れているようにさえ感じた。

 

現地に駐在する日系商社マンが「カースト制度は、今後数十年はなくならないだろう」と言っていたが、今回の取材を通して、その可能性を実感した。

 

多くの矛盾を抱えながらも成長し、インドは、いずれGDPで日本を抜き世界3位の超大国になると予測される。

 

国際協力銀行の人が「好き嫌いではなく、日本が付き合っていかなくてはならない国」と、語っていた言葉が、今でも印象に残っている。

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