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国営と民間航空の差(フジサンケイビジネスアイ 黒川信雄)2005年3月

3月15日、17:00コルカタ発ニューデリー行きの国営インディアン・エアラインズ201便はその3時間後、ようやく機内に案内された。しかし明かりが暗く、前部座席のポケットも清掃した様子がない。「遅れは当たり前。国政航空はいつもこうです」。現地滞在経験の長い日系商社マンは苦笑しながらそう語った。

 

一方、他の路線で利用した民営のジェット・エアウェイズのサービスは、正反対だった。空調がよく効き、新調したばかりの座席と明るい機内。客室乗務員はてきぱきと業務をこなす姿が好印象を与えていた。1ヶ月の間に数回利用したが、遅れは1回もなかった。

 

今回のインド訪問では、混乱しながらも変化を遂げようとするインド経済の姿を垣間見ることができた。長い植民地時代の経験から外資への門戸を閉ざし、国営企業の保護政策を取りつづけてきたインドだが、急速な経済成長を支えるために市場開放政策を次々と打ち出している。民間企業にシェアを奪われてきた国営航空会社も、4月末には大半の乗務員が契約社員という格安航空会社を打ち上げ、巻き返しを図るという。

 

03年に8.5%、04年も6.9%成長を遂げたインド経済。米調査会社は2050年までにインドが経済規模で日本を抜き、GDPで世界第3位になると予測する。しかし1日1ドル以下で生活する人口が3億人を超えるという状況のなか、社会の安定を図りながら、なおかつ成長を遂げるというのは並大抵なことではないだろう。国営企業の改革などは、その端緒に過ぎない。

 

4月末には小泉首相も訪問したインド。将来の〝超大国〝がどのような道を歩むのか。これからも注目していきたい。

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