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車社会の拡大と環境(中日新聞 大橋洋一郎)2005年3月

ニューデリー、バンガロール、コルカタなど主要都市の交通渋滞はすさまじい。自動車、オートバイ、歩行者に牛までが混然と道にあふれる。スキあらば強引に割り込もうとクラクションを鳴らしまくる人たち。騒々しさと熱気がインドの勢いを物語っているようだ。

市街地の車を観察すると、スズキ、トヨタ、ホンダ、三菱といった日本車が目立つ。インドの乗用車販売は年間で100万台規模、オートバイは600万台を超える大市場だ。乗用車はスズキ、オートバイはホンダがそれぞれトップシェアを握っている。

 

ニューデリー郊外のスズキの子会社マルチ・ウドヨグは1980年代から操業する日系企業の草分け的存在。アルトやワゴンRの生産ラインで黙々と働くインド人従業員の姿は、効率化を徹底させる日本式経営の浸透を感じさせた。

 

バンガロール郊外のトヨタの合弁会社トヨタ・キロスカは1997年設立と後発ながら、品質面で高い評価を獲得済み。広大な敷地はまだ4分の3が未使用と、増産に備える態勢も整えている。

 

両社の首脳は「10億を超す人口がインド市場の最大の魅力」と口をそろえた。IT企業の発達や都市の工業化による中間層の増大を視野に入れ、オートバイから小型乗用車、小型車から中型車へのグレードアップ需要を狙う。

 

一方、俳ガスによる環境への悪影響も深刻。世界遺産のタージマハールは大気汚染が原因で変色し始めているという。

 

近づいて見ると、たしかに写真でよく紹介されるような真っ白でなく、薄いグレーだった。モータリゼーションの進展とともに必ずやってくる環境問題。日経企業を含め、インドがどんな対応をするか、気になるところだ。

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