ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。


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五感で触れた感性の肥やし(高知新聞 岡村啓太郎)2005年3月

牛糞混じりの空気、活況を呈する企業、ガンジス川に身を清める信徒…。垣間見た多様なシーンの一つ一つが鮮明に浮かぶ。現地の移動バスの激しい揺れで頭の中を散々かき回されたはずなのに、それらの風景が溶け合わない。帰国後も「それがインドだ」とごまかしている。

 

インド旅行は全く初めて。まして高知県の地方企業とインドとの縁などほとんど見当たらず、インド人経営のレストランがあるくらい。上司に「まあ、何か見てこい」と言われ、「どうやって高知とこじつけようか」―ぐらいの心持ちで出発便に乗り込んだ。

 

一行で訪ねたインド政府関係者や現地企業、日系工場はほとんどが日本でも既報のものばかりで、特に目新しいわけでもない。特段のつながりもない本県のような地方紙からすれば、現地の経済事情は支局を構える通信社などに任せておけばいい。

 

ただ言わずもがなで、異郷の地の空気に記者が生身の五感で触れることは、それぞれに新しい発見があるものだ。それは取材というよりも、感性の肥やしになる。

 

今回は、現地インド人の秀逸なガイドでインド人の風習や政治意識にも触れることができた。

 

日本企業の駐在員らとの懇親会では、インドに対する本音も漏れ聞くことができた。それは前向きな評価だったり、辛辣な批判だったり。本質をぐさりと突く言葉は、インドという「不思議の国」を見る上で重要な基礎知識になった。

 

インドには今後も日本から巨額のODAが支出されるだろう。日本の税金がどういう国にどう使われているのか。地方にとっても決して無縁でも、遠い国の話でもない。注目の国である。

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