ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。


第1回アジア経済取視察団(2000年12月) の記事一覧に戻る

タクシン党首の自信(副団長 読売新聞社 清本修身)2000年12月

「盗難には気をつけてください。もし、そういう目にあっても、やっぱり東南(盗難)アジアだ、なんて思わないでほしい」「タイ国民は皆さんと触れ合うことが大好きです。対(タイ)人関係が上手です」。われわれ視察団の最後の訪問地タイでの現地ガイド氏は、達者な日本語に駄洒落をちりばめて疲れ気味の旅を楽しませてくれた。

 

タイはそれまでのイスラム国とは違って、仏教国。日本人にはやはり気分が落ち着くのか、あるいは「微笑の国」の趣に緊張が解けたのか、一行のだれもが羽を伸ばして滞在を満喫した感があったように思う。

 

とは言え、取材日程の消化にも大忙しだった。要人との会見の目玉はタイ愛国党のタクシン党首となった。1月6日の総選挙を控え、同党が最も優勢との見方がほぼ定着していたため、タイミングが良かったこともあるが、それよりタクシン党首が外国マスコミの取材に応じるのは久々ということで、現地駐在の日本各社の特派員も大挙押し寄せた。「彼の党の勝利は確実視されているが、実は彼自身の資産隠しが大きな問題として浮上している。党が勝っても彼が首相になれるかどうか不透明。その辺を探ってみたいのだ」。

 

現地特派員勢はそんな声を聞かせてくれたが、会見でのタクシン党首はもはや首相になったような気分で多様な政策を能弁に披露した。政策プレーンもそばに従え、自信たっぷりの表情が印象的だった。

 

日本のマスコミに優先会見をしてくれたのは、両国関係の重要性を十分認識してのことだろう。タイ最大の華僑系多国籍企業CPグルー王との会見でも、同社の扱う食品のヤキトリやエビなどが日本の食卓に上がっていることを教えられ、改めて経済関係の深まりを実感した。

 

最終日、空港に向かう前、かつて日本兵が持ち込んだといわれる現地流タイスキを堪能して全員、元気に帰途についた。

ページのTOPへ