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歴史を味わう旅(読売テレビ 春川正明)2018年10月

やっぱり、京都は奥深い。1日で4カ所を訪問してお話を聞き、時代祭の行列を観て、さらに耐震工事を終えた南座も見学した。

 

まずは京都精華大学の学長でアフリカのマリ共和国出身のウスビ・サコ学長。関西弁ペラペラ。マリの国家政策として奨学金も得て中国や日本で長年学んだが、マリに帰国しなくてもいいのかと問われると「どこにいてもマリに貢献すればいい。毎年国に帰って講義や国家プロジェクトに携わっている」。大学経営については「日本では18歳人口が減っているが、世界では増えている。留学生を40%にしたい。大学は日本のためにだけある訳ではない」。自らのローカルな発想が恥ずかしい。

 

次に訪ねたのは茅葺屋根の門が有名な人気のお寺、法然院。梶田真章住職のお話はいつまでも聴いていたかった。「日本の坊主はさぼって仏教を広めず、法事や葬式などの先祖供養をやってきた。色々な形の仏教があるのが日本の良さ。何が正しいかでなく、自分にふさわしい宗教を」。環境問題に取り組み、NPO法人の理事も務め、コンサートやシンポジウムなどで寺を広く開放するのは出会いの提供だという。

 

「このお菓子を食べたら、もうすぐ花が咲くなあ」という季節感が菓子作りには大切と和菓子の名店「末富」の山口富蔵会長。「職人は仕事場だけではだめで、菓子を作って箱に入れて、配達の途中に山や川がどうなっているのかを感じる。そしてお茶会でお菓子を器に入れるのも勉強」と、菓子作りを実演しながらのお話。

 

最後は門川大作京都市長。「文化を基軸とした都市経営で日本を元気に。観光では量を求めず質を高める、観光と文化と伝統産業のマッチングを目指す」と着物姿で熱く語った。

 

皆さんのお話の内容がなんとも味わい深い。長い歴史と濃密な人間関係。京都人ならではのお話だった。

 

今回の取材では学ぶことばかりだったが、とても印象に残ったのは取材団でご一緒した先輩ジャーナリストの方々の迫力と熱意。普段から記者会見でも勉強会でも積極的に質問することにしているのだが、今回は先輩方の勢いに押され当初はなかなか質問できなかった。まだまだである。この貴重な出会いもまた、大切にしたいご縁である。

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