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沖縄取材団(2015年6月) の記事一覧に戻る

「基地」軸に過去から未来、濃密な取材(共同通信社 川上高志)2015年6月

 

日本記者クラブの沖縄取材団には26社33人が参加、4泊5日の日程で米軍普天間飛行場や移設(新基地建設)計画が進む名護市辺野古の現地、南部の戦跡を訪れるなど密度の濃い取材を行った。

 

70年前に凄惨な地上戦が繰り広げられた6月。23日の「慰霊の日」を前に、現下の焦点である基地問題にとどまらず、今に伝わる戦争から経済自立を目指す最新の取り組みまで幅広く対象とし、「沖縄」の過去、現在、未来を考察する貴重な機会となった。

 

取材のポイントの1つは翁長雄志知事の記者会見だった。5月末から訪米した知事は、帰国後最初の記者会見の場に日本記者クラブ取材団を選んだ。単なる日程上の都合ではなく、基地問題の現状、沖縄の主張を全国に発信しようという明確な意図の表れだろう。

 

辺野古移設問題に対する参加各社、記者個人の主張はまちまちだと思われる。しかし「国の権力が進めることを止められるわけがないという人ごとのような姿勢は、日本の地方自治の危機だ」と「連帯」を訴えた知事の言葉は参加者の胸に響いたのではないか。

 

移設阻止を主張する稲嶺進名護市長の話を聞く一方で、普天間基地の早期移設を求める地元・宜野湾市の佐喜真淳市長や辺野古でボーリング調査を進める沖縄防衛局長とも会見した。普天間飛行場では基地内で米軍司令官の説明を受け、辺野古では漁船に分乗し、埋め立て予定海域を海上から取材した。

 

各地の戦跡や街中に広大な敷地を占める米軍基地は、戦争が今でもリアリティーを持つ沖縄を実感させる。風化が指摘されるというが、沖縄以外の土地では感じることのない現実だ。参加各氏がどう伝えるのか。報道を期待したい。

 

今回の取材では一連の記者会見や視察の設定、現地での丁寧な説明まで沖縄タイムス、琉球新報両社の皆さまに大変お世話になりました。基地に真正面から向き合い、語る真摯な「熱さ」を感じさせていただきました。感謝申しあげます。

 

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