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沖縄の番外地扱いに憤り 地方自治に危機「連帯を」(佐賀新聞社 井上武)2015年6月

取材する側なのに、ずっと問い掛けられているような1時間だった。

 

取材団の一員として6月11日、翁長雄志知事の会見に臨んだ。知事は、米軍普天間飛行場の辺野古移設中止を直訴した訪米の感想を述べると、こう続けた。「沖縄と本土の間には心のひだというか、乖離がある。(辺野古移設やオスプレイの普天間配備に反対した県民大会に)3万5千人、10万人集まっても、ご理解いただけない」

 

県民の4人に1人が犠牲になった沖縄戦。サンフランシスコ講和条約発効後、平和を享受した「本土」とは裏腹に、人権が蹂躙され続けた米施政権下での暮らし…。日本復帰後も米軍基地が横たわる過重な負担は変わらず、「平和憲法の番外地」のように扱われる憤りが発言ににじんだ。

 

「今は沖縄だけが不利な状況にあるのではない」と、地方自治の危機にも言及した。地方へ一方的に国策や国益を振りかざす安倍政権の危うさを感じ取り、警鐘を鳴らした。

 

佐賀県には、佐賀空港への陸上自衛隊のオスプレイの配備計画がある。防衛省が昨年7月に初めて説明し、沖縄の米海兵隊オスプレイの訓練移転も併せて要請した。中央が推した候補を破って1月に就任した山口祥義知事は米軍の利用形態を含めた詳細な説明を防衛省に求めているが、いまだに回答はない。自治の危機は、既に始まっているのかもしれない。

 

「沖縄の問題を知らんぷりすると、佐賀空港に限らず、原発の置き場所も核のごみの中間貯蔵施設も情報提供がないままどんどんやられる」と翁長知事。「中央集権的にいけば、歯止めが利かなくなる。ノーというものはノーと言って連帯を」。問い掛けを人ごととせずに向き合えるか、「本土」側が問われている。

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