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「上から目線」映す海(共同通信社 鶴田大悟)2015年6月

昨年9月の菅官房長官もそうだが、閣僚の辺野古視察はヘリから見下ろすのが定番のようだ。抗議から身を遠ざけたいのか、「上から目線」のあらわれか。中谷防衛相は5月、普天間飛行場は視察し、辺野古は見ずに帰った。それで「辺野古移設が普天間の危険性を除去する唯一の解決策」と判断できてしまうらしい。

 

前日に普天間飛行場と米軍ヘリが墜落した沖縄国際大学を視察した取材団は、漁船に乗って辺野古沖の大浦湾に出た。普天間の周囲に密集する住宅と、辺野古の先に広がるマリンブルー。瞬時に胸に迫る光景だ。

 

大浦湾北部の漁港から約5分、数珠状に連なるオレンジ色のフロートと黄色のブイが目の前に迫る。立ち入り禁止水域だ。ボーリング調査の台船が遠くに見える。午前中、抗議を試みたカヌー隊が海上保安官に一時拘束されたと聞く。我々も海保のボートにマークされ「速やかな退去を」と何度も警告を受けた。ビデオカメラが常にこちらに向けられていた。

 

ジュゴンの餌場を通り、反対派の座り込みテントがある辺野古漁港に着いた。ヘリ基地反対協議会共同代表の安次富浩さんが話す。「海上基地案が出た11年前、私たちが海上行動で負けていたら、この光景はなかった」。埋め立てに必要な土砂はトラック350万台分。この海を前に、反対派と容認派に分断されている現実を思う。東京で新基地の図面に目を凝らしても実感できない不条理。今までここに来なかった自分を恥じた。

 

那覇に戻った我々に、沖縄タイムス元論説委員の屋良朝博さんは、在沖縄米軍が真の抑止力になり得ているのか問いかけた。70年前、太田実中将が「沖縄県民斯ク戦ヘリ」と打電し自決した6月13日当時の全国紙も紹介してくれた。大相撲千秋楽の記事―。「目まいがするようなギャップ。基地問題の核心部分がここにある」と屋良さんは話した。

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