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復興とは何か 「20年後」の答えを探して(岩手日報社 村井康典)2014年12月

 

阪神・淡路大震災から20年を迎える神戸を歩きながら、2つの問いが頭から離れなかった。1つは「東日本大震災から20年後に東北はどうなっているのか」、もう1つは「復興とは何か」ということだ。

 

廃虚のようだった神戸の街はすっかりきれいになった。街の傷痕はいつか癒えても、人々の心は容易に癒えないことをこの取材を通してあらためて知った。災害対策において命を守ることの大切さを痛感する。

 

すでに神戸市民の4割が震災後に生まれた世代だという。記憶の継承が新たな課題になっている。兵庫県庁も神戸新聞も「伝える」ことの大切さを強調した。

 

兵庫県の杉本明文防災監は「復興が終わったとはとても言えない」と話した。風化を防ぐことは「残された課題」を解決していくために必要なことはもちろん、次なる災害への備えでもある。同じ被災地の新聞として、経験を伝えていく責務の重さを感じる。

 

2つの震災の間に16年という歳月が流れた。復旧・復興のための法制や施策は着実に進化している。被災者生活再建支援法やグループ補助金など、阪神・淡路では認められなかった私有財産形成につながる制度も東日本では生まれ、拡充された。

 

しかし、それだけでは足りない。大切なのは、人が戻って暮らしていくことだ。10年目に震災前の人口を回復した神戸と、震災前から人口流出が止まらない東北の被災地の差を思うと、「20年後」の答えはまだ見つからない。原発事故に苦しむ福島の未来はさらに不透明だ。

 

衆院選の公示日にもかかわらず、親身に対応してくださった神戸新聞社に感謝します。

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