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第17回(中国)「一帯一路」の構想と現場(2017年7月) の記事一覧に戻る

自国政治を語れぬ中国の不思議(中澤 克二)2017年7月

日本記者クラブ訪中取材団の旅は、始まる前から帰国までスリリングだった。団員が期待していたのは確定していたウイグル族主体の少数民族地域、新疆ウイグル自治区での取材だ。「一帯一路=新シルクロード経済圏構想」は、同自治区から中央アジアへのルートが陸路の大動脈だ。

 

その新疆行きの行程が出発直前、突然取り消された。残念だが、駐日中国大使館など関係部門の努力で代替地、西安での取材ができたことに感謝したい。

 

中国入り後も先方は「重要な日程が入った」と説明しただけで、真の理由は不明だった。しかし、こんな突然の変更自体、今、中国が抱える特殊事情を映している。なぜそうなったか。それを考えるのが、まさに中国取材でもある。

 

中国では近く5年に1度の共産党大会で最高指導部人事がある。われわれの滞在中にも、習近平総書記と主要幹部の大会合、内モンゴル自治区の大軍事パレードがあった。新疆では別の軍事関連の行事もあった。中国は政治の季節のまっただ中にいた。微妙な地域に外国記者団を受け入れる余裕はなかったのかもしれない。

 

さらに重大なのは、われわれの中国入り直後、先に重慶市トップを解任された孫政才氏が当局の調査を受けていると正式発表された件だ。次世代指導者の有力候補の失脚である。われわれの訪問地の地方紙もトップで報じた。わずか数行にすぎず、解説はない。

 

中国では敏感な政治問題を勝手に論じるのはご法度だ。庶民がインターネット上で論じた内容も削られる。われわれの取材を受けた各地の関係者も、誰一人として孫政才事件に言及しなかった。最大の話題は素通りだ。

 

同じ頃、中国のテレビニュースでは支持率が急落した安倍晋三首相の苦境を繰り返し取り上げていた。ネット上の議論も自由だ。自国政治は語ってはいけないが、外国政治なら議論できる。改めて、特殊な中国の雰囲気を感じた旅だった。

 

 

(日本経済新聞社編集委員兼論説委員)

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