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第16回(フランス・スイス)エネルギー事情、政策転換と核燃料サイクルの現場(2016年10月) の記事一覧に戻る

厳しさ増す原発大国(共同団長:井田 徹治)2016年10月

「フランスの原子力分野では最近、大きな変化があった。昨年6月に示された政府の方針で、アレバは2つに分割され、原子炉部門はフランス電力(EDF)に売却された」―。大企業の高層ビルが立ち並ぶパリ郊外のビジネス地区、ラ・デファンスに建つ「アレバタワー」の一室で同社のギヨーム・デュロー上席執行副社長は取材団にこう述べた。

 

58基の原発が電力の約75%を供給する欧州の原発大国フランス。だが、原子力企業は巨額の負債を抱えてリストラを余儀なくされ、原発依存度を2025年までに50%まで下げることを定めた法律が採択された。取材団のインタビューなどを通じて、フランスの原子力を取り巻く状況の厳しさを実感した。

 

多額の負債を抱えたアレバは、政府の資本注入と同時に分社を迫られた。原子炉プラント部門(アレバNP)はEDFに売却、残された「新アレバ」は燃料加工や放射性廃棄物の処理などのビジネスを担う。

 

デュロー氏は「新アレバには多額の負債が残っている。政府の資本注入に加え、今後、30億ユーロ程度の増資を第三者の投資家から募る必要がある」と述べた。

 

アレバ支援を続けてきたEDFも、今回見学したフラマンビル原発3号機など欧州加圧水型原子炉(EPR)の建設費膨張や工期の遅れなどが原因で経営が立ち行かなくなり、政府の支援を受けることになった。16年6月末段階の負債は362億ユーロにも上る。

 

フラマンビル3号機の建設費は105億ユーロとのことだった。新設に必要な資金の獲得は難しく、40年の運転寿命の延長に活路を見いだすしかない原子力産業。その姿はフランスも日本も共通している。

 

(共同通信社編集委員兼論説委員)

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