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第15回(中国)新常態(ニューノーマル)の経済現状と課題(2016年8月) の記事一覧に戻る

萎縮する巨大国営企業(中澤 克二)2016年8月

どこまでも広がる中国東北部のトウモロコシ畑の真ん中に鉄の街、鞍山がある。取材団の一員として、ほぼ20年ぶりに遼寧省鞍山市と、巨大な国有企業、鞍山鋼鉄を訪れた。1990年代末、鞍山鋼鉄は技術的にも生産能力的にも、まだ発展途上だった。その後の急成長で粗鋼生産量3250万㌧(2015年、世界鉄鋼協会調べ)を誇る世界7位の鉄鋼メーカーになった。

 

中国経済は鉄鋼の生産過剰も足かせになり減速している。かつて、きれいとはいえないまでも活気にあふれていた鞍山。中心部の商店街では今、空き店舗が目立っている。

 

そして何より変わったのは、国有企業の広報体制だ。20年前、鞍山鋼鉄は外国人記者にも高炉を視察させ、生産をめぐる基本的な数値も公開していた。今回の取材で鞍山鋼鉄の責任者は、すでに公表されているはずの数字さえ明らかにしなかった。まったく取材にならなかったといってもよい。

 

国策で減産を迫られる巨大国有企業はあらゆる面で萎縮していた。中国経済の一断面を見ることができた点で、これはこれで大きな収穫だった。

 

(日本経済新聞)

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