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目覚ましい「社会主義市場経済」 そして中国スタンダード(副団長:小野木昌史)2015年11月

林立する大規模な巨大ビル群と最新鋭の車で溢れかえる道路、今回訪れた北京と成都のいずれの都市でも、想像していたよりはるかに近代化が進んでいるという印象を受けた。

 

GDPの成長率が7%前後でやや一息ついた感があるといわれるが、建設ラッシュは続き、町では制御できないほどの輸入車が走っている。これは、かつてない「社会主義」の下で「市場経済」を発展させた国の勢いなのだろう。

 

大規模な巨大ビル群を政府の号令一下で建設する「社会主義的」色彩と、「豊かになれる者から豊かになれ」と始まった市場経済が合致した成果を大都市では実感した。都市部では、欧米のブランドショップが軒を連ね、人々はセンスの良いファッションに身をまとい、好きなものを買い、好きなものを食べる、(限定的かもしれないが)そんな自由を満喫している様子もうかがえた。

 

その一方で、経済成長に裏打ちされて自身を取り戻した中国が、「世界の中心は中国である」という「中華思想」に基づき「中国を中心とした国際ルール」を世界に認めさせようという意欲を、外交部や中国公共外交協会幹部の話から感じた。現在、アメリカと並び立つ中で、中国は自分たちのスタンダードを全面的に押し出し、新しいルールで欧米に対峙しようとしている。

 

文化面でも「孔子学院」を通じて自分たちの文化を世界に広めることに努力し、国内では海外の中学・高校の留学生を積極的に受け入れて大学にも進学させている。取材団は、北京市第39中学国際部を訪問しインドネシア、タイ、韓国などから来ている生徒にインタビューした。

 

さらに、3年前に立ち上げた公共外交協会では自国のイメージアップを図るなど、幹部層は新たな中国像を作ることに熱心に取り組んでいた。

 

今回の7日間の旅を通して、名実ともに世界のトップとしての地位を固めながら、その影響力を強めようとする中国のアグレッシブな姿を見ることができた。

 

(NHK報道局編集主幹)

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