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第14回(中国)日中関係、北京冬季五輪開催、四川大地震復興(2015年11月) の記事一覧に戻る

“多様な中国”認識新たに 対日改善への意欲も実感(団長:坂東 賢治)2015年11月

中国という巨大な取材対象と格闘を続けて4半世紀になるが、訪れるたびに何か発見がある。今回、取材団が訪れた場所はバラエティーに富んでいたが、どこでも認識を新たにさせられる話を見聞きすることができた。北京から四川省へと続いた旅のハイライトをご紹介したい。

 

盧溝橋の中国人民抗日戦争記念館を参観した際、70周年記念展より10月から始まった台湾での抗日史を伝える特別展に関心を持った。前日(11月7日)に歴史的な中台首脳会談が開催されたばかり。台湾を接収した記念日に合わせた開催というのが公式説明だったが、どこかで連動しているのではという疑問も残った。

 

中国政府も民間と連動して進めるパブリック・ディプロマシーの必要性を感じているのだろう。3年前に発足した中国公共外交協会での座談会にはメディア、学者、ネット企業幹部、中国語普及事業を進める孔子学院の幹部らが参加し、予定時間を大幅に超えて議論が続いた。

 

教育も取材テーマの1つで、外国人留学生を受け入れている北京の第39中学校(日本の中学、高校に当たる6年制)を訪問した。寄宿舎で生活する国際部の学生60人のうち韓国が25人、インドネシア17人、タイ8人で日本人はゼロ。この数字に中国との心理的な距離感の違いを感じた。

 

2008年の北京夏季五輪で水泳競技に使用され、22年の北京冬季五輪でもカーリングの会場となるウオーターキューブ(水立方)を見学した際は、ネット通販最大手のアリババ関係者が11月11日の「独身の日」セールの前夜祭の準備に追われていた。

 

中国のテレビで前夜祭の生中継を見たが、アリババの総帥、馬雲(ジャック・マー)氏がジェームズ・ボンド役で知られるダニエル・クレイグ氏と笑顔を振りまいていた。セールの総売り上げは1兆7600億円に達し、株バブル崩壊だけではない中国経済の1面を見た気がした。

 

四川省では08年の四川大地震の復興状況視察がメーンテーマだった。中央政府が巨額の復興資金を注ぎ込んだこともあり、かつては省都・成都から5、6時間かかった震央の映秀鎮まで高速道路で2時間足らずで結ばれている。

 

数千人が死亡した鎮の中心部には立派な新街区が作られ、被災者が観光用の旅館や食堂などを経営していた。地震体験のアトラクションまであり、日本人とは感覚が違うが、「生き残ったものの生活も大事だ」という地元幹部の言葉にもリアリティーがあった。

 

当初、中国側に要請していた要人との会見が実現できなかったのは残念だったが、外務省幹部との夕食会や意見交換の場が設定された。中国側の対応や発言の端々から対日関係改善の意欲が感じられたことを付け加えておきたい。

 

(毎日新聞専門編集委員)

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