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第12回(欧州3カ国)エネルギー事情視察(2015年2月) の記事一覧に戻る

ドイツ:"不都合な真実"に挑む(竹田 忍)2015年2月

今ドイツは「エネルギーヴェンデ(大転換)」と呼ぶ壮大な実験のさなかにある。2022年までに国内17基の全原発を順次停止し、2050年までに発電量の80%を再生可能エネルギーで起こすという。日本の原子力業界の一部はドイツの脱原発政策について永続性を疑問視するが、今回の日本記者クラブ取材団に対し、ドイツ側関係者は「変更はないだろう」と口をそろえた。

 

再エネの目標値は拘束力を伴う「再生可能エネルギー法」に基づくが、産みの苦しみに直面する。風力発電は北部に偏在し、需要家の大企業は南部に集中してバランスが悪い。「解消には南北を結ぶ送電網が必要」と送電会社「50ヘルツ」の担当者は語る。ただ送電線工事は環境を破壊すると反対が強い。放置すれば風力発電は止まる。環境保護運動が再エネの足を引っ張る皮肉な現実がある。

 

独経済エネルギー省のライナー・バーケ事務次官は「国内調達できる再生可能エネルギーの普及で輸入石油への依存度が下がる」と述べた。ただ、再エネには天気による出力変動を相殺する調整電源が不可欠。この役目を担うガス火力発電所はロシアから輸入する天然ガスを使うため、地政学的なリスクを負う。

 

電力会社E・ON(イーオン)は、2013年4月3~5日の3日間、薄い霧で太陽光発電の発電量が予想値を大きく下回り、欧州中から買える電気を全て買って電力不足をしのいだと明らかにした。電力の系統網が国境をまたぐ欧州だから対応できた。島国の日本では大停電になりかねない。

 

再エネには、まだ"不都合な真実"が存在する。だが自らの技術力を信じ、克服に敢然と挑むところにエネルギーヴェンデの真骨頂がある。

 

(たけだ・しのぶ 日本経済新聞大阪本社編集委員)

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