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第12回(欧州3カ国)エネルギー事情視察(2015年2月) の記事一覧に戻る

アイスランド:電力は全て再生可能エネルギー(共同団長:井田徹治)2015年2月

コケに覆われた溶岩台地の向こうで、蒸気を上げながら発電する地熱発電所と轟音を上げながら回る内部のタービン、巨大なタワーを使った井戸の掘削現場など、地熱エネルギー利用の先進国、アイスランドで日本ではなかなか見ることができない施設を見学することができた。

 

この国の電力は水力が約7割、地熱が約3割と全て再生可能エネルギーからのものだ。地熱発電の過程で出る温水や地下水を利用した地域冷暖房の普及も進み、ほぼ90%で地熱が利用されている。

 

数ある取材先の中で何といっても興味深かったのは、スバルツェンギ地熱発電所に隣接する巨大な地熱スパ「ブルーラグーン」だろう(15㌻に写真)。

 

地熱発電所から放出された場所で地元の人が入浴を始めたのが由来だというこの施設は、今では近代的な設備を備えたアイスランド随一の観光施設となった。皮膚病の治療専門のクリニックも併設され、日本を含めた海外からの観光客も多い。日本では対立することが多い、発電事業と観光業の利益を両立させられることを示すものとして注目される。

 

温水の温室や魚の養殖池の加温施設への活用、国内では有り余る再生可能エネルギーで、水を電気分解して生産した水素と地熱発電所から回収した二酸化炭素からメタンガスを生産する手法の研究開発など、地熱の多目的利用の取り組みも進んでいる。

 

「人口32万人余の小国、アイスランドと日本を比べても意味はない」。こんな指摘を耳にすることが多い。だが、廃熱を利用した地域冷暖房はもちろん、地熱発電に利用すべき場所と保護すべき場所に関するオープンで科学的な議論の進め方、地熱発電事業者と観光業者の対話、新たなビジネスに挑む進取の気性など、日本が学ぶべきことは多いと感じた。

 

(いだ・てつじ 共同通信編集委員兼論説委員)

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