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静岡県に置き換え 多重災害をルポ(静岡新聞社 高林和徳)2011年5月

海溝型の巨大地震と原子力災害がもたらした危機。東海地震の震源域直上に位置し、浜岡原発を抱える静岡県にとって、まさに人ごとではない。震災直後に現地入りした第1陣の取材班に続き、第2陣の一員として4月4日から9日間、福島、宮城、岩手の3県で取材を重ねた。

 

物資や燃料供給の状況がつかめず、社有車のトランクに大量の水や食料、ガソリン携行缶を詰め込んでの出発だった。

 

現地の交通事情は予想と違った。第1陣が悩まされたのは深刻な燃料不足。第2陣は、ガソリン供給が戻ったことによる大渋滞に直面した。

 

特に仙台市周辺はひどく、目的地には一向に着かない。運転を交代しながら後部座席でパソコンに向かった。

 

壊滅的な被害を受けた街を訪れるたび、何度も現実感を失った。取材の対象は津波や原発事故の影響、物流の停滞など、静岡の防災に置き換えできるテーマ。常に仮想の東海地震が念頭にあった。

 

本社ヘリ「ジェリコ1号」も投入した。魚市場や水産加工工場が集積した三陸沿岸の漁港は静岡の焼津漁港を想起させ、その入り組んだ地形は伊豆半島の景色と重なった。

 

震災から1カ月の節目に始まった連載企画「M9.0東日本と東海地震 ゼロからの出発」は現地ルポをメーンに、静岡の現状や課題を検証する別稿を併記したスタイル。被災地で噴出している問題は全て、東海地震発生後の静岡にも降り掛かってくる可能性が高い。

 

震災を受けて、浜岡原発は世界規模で”知名度”を上げた。反対デモは静岡だけでなく、名古屋や東京でも行われた。6号機の新設は暗証に乗り上げた格好だが、中部電力は依然として積極的な原子力推進の姿勢を崩していない。

 

地震と原発事故が同時に起こる多重災害が現実になった東日本大震災。被災地復興に心を寄せながら、足元の問題を追っていきたい。

 

(たかばやし・かずのり 豊橋支局長/2003年入社)

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