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3・11から3年:風化させない決意2014(2014年3月) の記事一覧に戻る

変わらぬ原発の2項対立構図(福井新聞社 加藤祐一)2014年3月

東日本大震災当時は、本社異動を1週間後に控え東京支社勤務だった。テレビ画面を通じ福島原発の水素爆発を目の当たりにした時は、さすがに身の危険を感じると同時に「福井の原発はこれからどうなるのか?」ということが頭をよぎった。

 

福井県は商業炉だけでも13基が立地する。この3年間で国内唯一の大飯原発3、4号再稼働など、全国的に注目される節目を地元として報道してきた。今後は新規制基準に基づき安全審査中の原発の再稼働が焦点となる。再稼働すれば再び反対の嵐が吹き荒れるのだろうと思う。

 

原発の議論は「反対」「賛成」の単純な2項対立構図はいまだ変わらないことが、エネルギー問題の解決の糸口がみえない要因ではないか。大飯原発再稼働を認めた地元も、福島で避難を余儀なくされた住民のことを思えば、積極的な賛成の立場ではないのだ。

 

ところが立地市町は「多額な交付金などの恩恵を受けている」といわれ、電気の消費地で反対を叫ぶ人たちに、地元の複雑な事情は理解されずに議論もかみ合わない。先の都知事選をみても、結果は別にして「原発ゼロ」の是非だけを選択肢にして世論を誘導しようという流れがあったことは残念に思う。

 

地元はリスクと向き合う苦しみがあると同時に、都市圏に電気を送り続けてきた自負もある。原発ゼロに向かうにしろ、長い期間を要する廃炉の問題にも今後直面する。

 

立地県であるからこそ、現場の目線で原発を含めエネルギー問題を考え、あるべき姿を発信していくしかない。

 

(かとう・ゆういち 政治部長)

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