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3・11から3年:風化させない決意2014(2014年3月) の記事一覧に戻る

事実を報じるだけでいいのか(福島中央テレビ 岳野高弘)2014年3月

 

この3年、さまざまな境遇にある被災者の思いを自分なりに受け止めてきた。避難を強いられた飯舘村の畜産農家、自ら除染に取り組んだ保育園の先生、県外に自主避難した家族、放射能に苦悩する農家、被災者たちのいまを伝えるのが使命だと思って走ってきた。

 

しかし、不十分な賠償、除染の遅れ、放射能への不安などの問題がいまだ解決されないことにあらためて愕然とする。3年前と同じ質問に、同じ答えが返ってくる。「避難先でいま、取り戻したいのは何ですか?」「離散した家族みんなが一緒に住める家を建てたい」。十分な賠償が受けられないまま、夫婦だけの狭いアパート暮らしが続く。「放射能への不安は?」「神経質になり過ぎないようにしている。不安が消えたわけじゃないけど」。

 

一般公衆の被曝許容線量は年間1ミリシーベルトだ。3年前、20ミリに引き上げた国は、親たちの猛反発に、「限りなく1ミリを目指す」としたが、20ミリが安全なのかわからないまま、子どもたちにもいまなお適用されている。怒りや疑念は心の内にあるが、親たちも疲れた。テレビは何をしてきたか。

 

「ジャーナリズムは事実を伝え続け世に問う」という。3月11日を特別な日として、これから何十年伝えていけば解決するのか。「事実を伝える」だけのニュースや番組は、福島ではすでに意味を失っているように見える。「世に問い」かつ忘れ去られないニュースとは。権威、常識と闘う覚悟を自分自身に、テレビに問い続けたい。

 

(たけの・たかひろ 報道部デスク)

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