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3・11から3年:風化させない決意2014(2014年3月) の記事一覧に戻る

進まぬ再建 いら立ちの先をみつめて(河北新報社 小島直広)2014年3月

東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の沿岸部で、公的な住まい再建が思うように進まない。河北新報社が1月、3県沿岸37市町村に実施したアンケートによると、集団移転や災害公営住宅など公的な区画・住居整備事業は、3月末で計画の6・7%にとどまり、国が「2015年度まで」とした集中復興期間内に全ての事業を終えるのは困難なことがわかった。

 

「3年たってもこんな状態では、被災者はストレスで参ってしまうよ」。宮城県内のみなし仮設民間アパートに住む男性から電話を受けた。「暮らし再建の希望を持てないことが一番つらい。何か一つでも目標があれば前を向けるのに」と男性は訴えた。被災者のいら立ちは募る一方だ。

 

復興遅れの原因は、事業を推進する自治体職員の人手不足や用地取得の難航、現場作業員の不足、資材の高騰などにある。福島では東京電力福島第一原発事故の除染作業が進まず、復旧復興のスタートすら切れない自治体もある。

 

事業が進まないことに業を煮やした被災者は、既存の住宅団地に住居を建てたり、都市部にマンションを購入したりするなど自力再建に踏み切る。その結果、沿岸の被災自治体から仙台市など大都市近郊へと人口流出が加速している。

 

東日本大震災は地震と津波、原発事故の複合災害という側面を持つ。阪神・淡路大震災などと違って、復興にあたり現地で再建することの難しさが表面化してきている。

 

東北地方の沿岸部はもともと震災前から少子高齢化と過疎が進む重い課題を背負ってきた。震災により時計の針が一気に進んだ感は否めないが「地域の創造的復興には何が必要なのか」を、被災地の新聞社として現状をみつめ、情報を発信していきたいと思う。

 

(おじま・なおひろ 報道部震災取材班キャップ)

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