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「工事中」の三陸(黒岩 徹)2017年2月

津波の鮮明な記憶を抱えたままどう生きるか――被災地の人々は、いま苦悩しつつ未来を見据えている。

 

高橋英悟住職が推進する「生きた証プロジェクト」は、苦しい記憶から被災者を解放させると同時に、未来の教訓を残そうという壮大な試みだ。犠牲者の七回忌を機に、その一部が出版される。住職は高台に納骨堂をつくって身元不明者の遺骨を納めようとする運動をリード、完成させた。人のために生きようとする宗教家の輝きが顔に表れていた。

 

ソフト面からあの時を解放しようとする未来志向だけでなく、ハード面でも防潮堤建設などの復興事業が続く。「防潮堤が高すぎて景観を台無しにした」との声がある。気仙沼市大島の山頂から見ると、人家も道路もない森林地帯、つまり波から守る必要のない崖の前に防潮堤が続くところもある。だが、津波の恐ろしさを伝え続ける語り部、「学ぶ防災ガイド」の元田久美子さん(59)は、自分の体験から防潮堤が必要と語ってやまない。

 

戦後復興期の日本を訪れた英人記者が「日本は工事中」と評したが、いま三陸は、ソフト、ハード両面で「工事中」なのである。

 

(毎日新聞出身)

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