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廃炉研究「想定」が頼りの現実(鈴木 龍司)2017年2月

人が簡単に近づけず、ロボットでも長時間の作業に耐えられない環境での廃炉作業。日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営する楢葉遠隔技術開発センターの視察では、想定を頼りに、手探りの繰り返しで作業を進めざるを得ない厳しい現実を再認識した。

 

福島第一原発2号機の原子炉格納容器では先日、人が数十秒で死に至るほどの放射線量が確認された。廃炉の工程で最難関とされる溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しは、遠隔技術の研究が鍵を握る。

 

その最前線のセンター試験棟では、2号機の格納容器下部を実寸大で再現した巨大な模型で、実験の準備が進んでいた。燃料デブリは遮蔽効果などを考慮し、水中での取り出しが有力視されているが、格納容器の水漏れをどう防ぐかが難題となっている。模型では3月以降、ロボットで「グラウト」と呼ばれるセメントのような材料を内部に流し込み、穴をふさぐ実験が始まる。

 

「国内外の英知を結集している」。センターの職員はこう力説する一方で、率直な意見も漏らした。「きれいな場所で行う実験と、イチエフ(第一原発)の環境で行う作業は、やはり違う。実験が成功しても、イチエフで使えるとは限らない」。センターには2号機の原子炉建屋内を3D映像で再現し、中の様子を体感できるシステムもある。ロボットの開発や訓練に用いられているが、やはり実際の現場の環境とは差がある。

 

昨年4月に本格始動したセンターの建設費は約100億円。止水実験には約40億円を投じているが、実寸大の模型を使えるのはたった1回だけという。今後、別の工程や2号機以外の廃炉に向けた実験には他の施設も必要で、廃炉に要する時間と費用はまだまだ想定できない。

 

(中日新聞社社会部)

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