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第10回(フィンランド・デンマーク)エネルギー政策(2013年1月) の記事一覧に戻る

風力王国デンマーク 市民も「投資」(副団長:服部 尚)2013年1月

 

日本記者クラブ取材団の一員として北欧デンマークを訪ねた。同国のなかでも自然エネルギーの生産地として知られるロラン・ファルスタ両島を巡るうちに、風力発電が電力供給の3割も占める風力大国である理由が納得できた。

 

ロラン島の中心地から北西にあるストックマーケ。一面雪に覆われた畑の一角に30年も前から自宅に風車を建てたクリステンセンさん夫妻の家を訪ねた。

 

「風車による収入はだいたい35万クローネ(約600万円)。83年にロラン島で初めて個人で風車を建てたが、最初の投資は9年で回収できた」と夫のクラウスさん(65)は話してくれた。小さな書斎のパソコンを見せてもらうと、発電量など細かなデータが管理されていた。

 

デンマークでは地域の人たちによる風力発電拡大を促す制度が充実している。同国では85年、原子力発電を導入しないことを議会で決定し、代替エネルギーとして地元の市民参加を柱に風力発電を促してきた。大西洋から吹く風は、起伏が少ない地形のデンマークにとっては豊富なエネルギー源でもあった。

電力固定価格買い取り制度や初期投資への補助金、税制優遇措置などで地元の人が地元の風車に投資しやすい仕組みが整えられてきた。

 

同国では、標準的な風車で投資利回りは年10%を超えるとされ、売電収入は7000㌛(約12万円)まで非課税だ。首都コペンハーゲン市沖合にある洋上風力発電群を見た折にも同国の風力発電産業協会担当者が「約1万人の市民が投資している。ふつうの株よりリターンがよいので、投資したい人がすごく多い」と話していた。

 

デンマークでは消費だけでなく送電もする「地産地送」方式が風車の拡大を支えた。一方、日本では電力価格固定買い取り制度が昨年導入されたが、企業主導のメガソーラーが目立つ。風力も事前アセスなどの規制の壁で導入量はまったく伸びていない。日本の取り組みはこれからだと実感する旅だった。

 

(朝日新聞社編集委員)

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