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第9回(ハワイ)米軍基地(2012年1月) の記事一覧に戻る

真珠湾攻撃から現在の米軍再編まで(松山 俊行)2012年1月

真珠湾の浅瀬に爆撃を受けた当時のままの姿で眠る戦艦「アリゾナ」。内部には今なお犠牲になった水兵たちの遺体が引き揚げられずに眠り、船体から漏れ出た燃料のオイルが今もなお、水面に漂っていた。

 

真珠湾攻撃から70年。まさに日米関係の節目に実施された訪米取材団は、未だ癒えることのない太平洋戦争の爪痕と、中国の台頭で激変する太平洋地域の安全保障環境への対処を急ぐ米軍の変容という、歴史のダイナミズムを直に目にする貴重な体験となった。

 

ウィラード司令官(当時)との会見では、焦点の沖縄・在日米軍再編問題で、普天間基地移設が遅れ、継続使用される事態になれば、維持費用の負担増加は避けられないとの見通しが示された。穏やかな口調で語りながらも、司令官の目からは、オバマ大統領が打ち出した新国防戦略で世界に展開する米軍全体に「空前の予算削減」と「太平洋シフト」の大きなうねりが押し寄せ、大転換期が迫っているとの緊迫感がにじみ出ていた。程なく海兵隊のグアムへの先行移転に向けた日米協議が判明したが、今後の太平洋を挟んだ米中、そして日米関係を俯瞰してみれば、まだその変化は緒についたばかりとも言える。

 

今回、米軍が日本の報道関係者に、ミサイル防衛で重要な役割を果たすイージス艦の司令室まで案内し、トモダチ作戦に携わった輸送機・哨戒機の細部まで披露してみせたのは、まさに、民主主義という価値観を共有する日本との同盟関係が、今後の米国のアジア展開において、死活的意味を持ってくるという認識があるからに他ならない。射撃訓練場で野鳥保護団体の女性が“ゲスト”出演し、軍用車が道路を走った際にできる轍(わだち)が、野鳥の巣となることで繁殖につながり、共存が図られているとの話には、さすがに、テレビ業界でいう“仕込み”の匂いを感じたが、同様にジュゴン保護で揺れる普天間基地移設を意識しての“演出”と考えれば、米側がいかに日本の理解取り付けに必死になっているかの証左といえるのかもしれない。

 

(フジテレビ政治部副部長)

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