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第8回(ハバロフスク・ユジノサハリンスク)極東ロシア・エネルギー資源(2008年9月) の記事一覧に戻る

バブルの行方は?(副団長:折坂 浩史)2008年9月

ロシア極東を訪れたのは約10年ぶり。ソ連崩壊後の混乱期と比べると、町の様相は一変。新しいビルが増え、古びた国産車は姿を消し、通りを走る車の大半は日本製の新車・中古車。人々の表情も、以前に比べればだいぶゆとりがでてきたようにも見える。

ここ数年、石油価格の高止まりの恩恵を受け、資源大国のロシアは年7%前後の経済成長を記録。オイルマネーに沸いているのは極東も例外ではなかった。不動産投資も進み、人口50万ほどの極東の中心都市ハバロフスクの不動産価格はこの8年で10倍に跳ね上がったという。

オイルマネーで財政が潤うロシア政府は2013年までに極東・東シベリアに日本円換算で約2兆6000億円を投じ、インフラ整備や地下資源の採掘などを進める「極東ザバイカル社会経済発展計画」を昨年策定した。

だが極東の経済的安定や成長のためには、これだけでは不十分で、極東から目と鼻の先の経済大国である日本への期待は大きい。日本の商社などが出資するサハリン沖の天然ガス・石油開発プロジェクト「サハリン2」の施設建設がほぼ終わり、来年以降はプロジェクトによる雇用の場も大幅に失われるという。サハリン州のホロシャビン知事は「空港、道路、港などの近代化に日本の技術と融資を期待したい」と訴えた。

折しも、米国発の金融危機が世界中に波及、ロシアの株式市場も直撃した。石油価格も下落傾向にあり、今後、極東経済への影響も懸念される。

計画経済の下で明日の生活が保障されていたソ連時代。市場経済の導入で弱肉強食の世界に一気に突入したソ連崩壊後の混乱期。そしてここ数年のバブル。20年足らずの間に激変を繰り返したロシアの社会、人々が次に迎えるのはどんな時代なのだろうか。

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