ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。


第8回(ハバロフスク・ユジノサハリンスク)極東ロシア・エネルギー資源(2008年9月) の記事一覧に戻る

ロシアからの熱い視線(佐野 正法)2008年9月

目の前に置かれたその地形図は、ある意味でとても新鮮だった。

ハバロフスクの郷土史博物館1階入り口に置かれた、北海道を含むロシア極東地域の局地地図。

オホーツク海を楕円形に囲むように、その部分だけをくりぬいた地図は、なるほど、こう見ると、日本とロシアはものすごく近くて、そしてここにはまだ、未知の可能性が数多く眠っているのかもしれない、と思わせるのに、十分だった。

「新潟からわずか2時間。いきなり目の前に、ヨーロッパのような町並みが現れた…」

それが、私にとってのロシア・ハバロフスクの第一印象だ。整備された町並み、ちょうど黄色く色づいた広葉樹。旅立つ前に抱いていた印象とはかなり違い、美しく、素朴さを感じる街だった。

しかし、そこに暮らす人々の生活は、決して楽ではない。

ヨーロッパに近い西部地域の開発の裏側で、中央政府から置いて行かれてきたという極東地域。ようやく開発の波が起き始めても、それに伴い進むインフレと経済格差。さらに、私たちが訪れたときは、まさしく世界金融危機が始まろうとする頃。

見た目とは違い、明るい未来だけがそこに約束されているわけではなさそうだった。

そんな時だけに、今回の取材のタイミングでは、ロシア政界や財界の日本に対する期待感を熱く感じた。「もっと多くの投資を、もっと多くの物流を、もっと多くの交流を…!」。ややもすると、身を引いてしまいそうな強い“押し”。

だが、取材団の中にも、「ロシアの片思い」と話す人がいたが、ロシアからの熱視線に比べて、日本はまだ、その気配すら気づいていないようだ。

ハバロフスクで仕事をする日本人商社マンたちがジレンマを感じていたが、両者が、近くて遠い隣人から相思相愛の仲になるには、ロシアの国内法や悪しき慣習など、まだまだたくさんの克服すべき問題が、間に横たわっている。求めるだけでなく、その魅力を磨いてもらいたいと、切に願う。

資源があり、大きなマーケットがあり、日本の技術が十分に生かせる未開発分野が数多くある極東ロシア。観光資源としての可能性もありそうだ。その原石を今磨くには、まだまだリスクが大きいだろうが、躊躇していては乗り遅れるかもしれない。どこがその先陣を切るか、日本の企業に期待を持ちたい。

…もちろんその前に、隣人のことをよ~く知ることが重要。

私のように、ボルシチの赤は、トマトの赤だと、とんだ勘違いをしないように、みなさんご注意を。

ページのTOPへ