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普通の鉄道が求められるアジア(川戸 和史)2009年9月

 ベトナムを訪れた際、高速鉄道についての期待や思惑が想像以上に高いことに驚いた。
 アジア各国ではいま、高速鉄道への関心が強まっている。台湾と中国で日本の新幹線をベースにした高速鉄道が開業した。日本を念頭に置いた経済発展モデルを駆け上がるうえで、ステップアップの象徴的な意味あいもあるように感じられる。

 ただ、受け入れ側の国の「鉄道年齢」あるいは「鉄道発展段階」というものを無視して、高速鉄道を入れるべきなのかどうか、はたと首をかしげたくなるのも事実だ。

 巨額の資本を割いて、時速300㎞の弾丸電車を走らせる代償もまた大きい。その前に、もっとできることがあるのではないか、ということだ。

 ちなみに、日本で東海道新幹線が開業したのが1964年。東海道線が全線電化されたのが1956年。全線複線化となると1913年にさかのぼる。東京で最初の地下鉄、銀座線の浅草-上野間の開業は1927年、全線開通が1939年だ。

 新幹線が走り出した台湾は、日本の植民地時代から鉄道整備が進み、「自彊号」など特急電車の運行が進んでいる。アジアの主要都市ではバンコクで地下鉄や高架式の新交通システムが運行されている。

 国力を引き出すという点で、鉄道整備は国土幹線や大都市の輸送基盤が先決だろう。

 経済発展が著しく、好景気が続いているとはいえ、ベトナムでは戦争の痛手もあって基本的な国土軸の整備が立ち遅れている。ハノイ-ホーチミンの幹線は単線、非電化で、1700㎞の距離を優等列車で30時間、貨物列車で60時間かけているという。

 であれば、ベトナムには新幹線ではなく、まず東海道線を作るのが先だ、というのが率直な感想だ。

 ハノイの街中も、二輪車の洪水といえるラッシュで、事故死者は増える一方だ。幸か不幸か、二輪車という移動手段が安価に供給される時代なので、鉄道整備が立ち遅れている展開にもなっているようだ。

 だが、四輪車と二輪車との棲み分けも考えれば、これも都市の壮大な非効率だろう。

 オーソドックスな鉄道整備が、このようなアジアの矛盾を解消するうえで果たす役割は絶大ではないか、と思われてならない。

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