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第6回(インドネシア、ベトナム)日本進出企業に政治改革の光と影(2007年2月) の記事一覧に戻る

「勢い」と「蓄積」(目黒 英一)2009年9月

 「やはり現地に行かなければ実感できないことがある」。そのことに改めて気付かされた取材だった。
  ベトナムとインドネシア。ともに「VISTA」「ネクストイレブン」に名を連ねる両国だが、日本にいて耳にするのは、ベトナムの好調さばかり。インドネシアについては捗々しい話を聞くことは少ない。
  現地発として日本に伝わるのは、ほとんどが「勢い」に関わるニュースなので、どうしてもそうなる。

 しかし、現地に出向いて「蓄積」を目にすると、ポストBRICsでいずれが本命となるかは、日本にいて思っていたよりも複雑な形勢にあるように思えてきた。

 「勢い」はやはりベトナム。日本の大手企業の工場が立ち並ぶハノイ郊外の工業団地は満杯で、次期の募集も順調だと聞く。
  しかし、一歩、工業団地から出ると、ハノイ市街地と工業団地を結ぶ道路は貧弱。電力不足もあり、信号は数少ないから、交差点は、気合で割り込しかない。
  港には大型船が入港できないし、中国との間の貨物輸送も国境でトラックのコンテナを積み替えなければならないので、中国の工場との一体運用も実現できていない。
  ベトナムの現状は「日本の60年代に似ている」と言われるが、経済活動の中心が鉄道距離で500キロ余りの東京・大阪間に密集していた日本に比べて、ハノイとホーチミンは1700キロも離れている。この2極を結ぶ鉄道や道路の整備をはじめ、インフラ面の課題は大きい。

 ハノイを発ってジャカルタに着いたのは夜。機上から見たジャカルタの街は濃密な灯りで輝いていた。電力の差は歴然としている。
  ジャカルタ郊外の工業団地へ向かう高速道路は、整備されて快適。周囲を走る車も大型の新車が目立つ。ここまでは、インドネシアの「蓄積」を強く感じた。
  しかし、工業団地に入ると印象は逆転する。進出している企業は疎らで、空き地が目立つ。せっかくの「蓄積」を「勢い」に結びつけることができていないのがインドネシアの現状ということだろう。
  民主化、地方分権の試行錯誤の中で迷走しているように見えるインドネシアの経済政策が定まり、蓄積を生かして再び勢いを取り戻すのか。ベトナムが今の勢いを加速し、蓄積でも追い抜く日が来るのか。

 何年か後に再び訪れて、両国の「勢い」と「蓄積」を確かめてみたい。

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