会見リポート
2025年04月23日
10:00 〜 11:30
10階ホール
同性婚訴訟に関する会見
会見メモ
同性婚を認めていない現行制度の合憲性を争う裁判が全国5地域で6つ起こされている。このうち3月25日に出された大阪高裁を含む5件で高裁判決が出ており、いずれも「同性婚が認められないのは違憲」との判決が出されている。高裁判決があった5件の訴訟の原告ならびに弁護団の代表者が、同性婚の法制化に向けた当事者としての思い、それぞれの裁判のポイントなどを話した。また同性婚の実現を目指す団体「Marriage For All Japan」の松中権理事が、これらの裁判や動きの概要、憲法学者の木村草太・東京都立大学大学院教授が、裁判や同性婚の実現に向けた論点、争点を整理した。
司会 佐藤千矢子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞社)
同性婚法制化のための立法作業を直ちに進めることを求める要請書
壇上並び順(敬称略)
後列左から
大畑泰次郎(関西弁護団)川田有希(関西原告)永里佐和子(九州弁護団)ゆうた(九州原告)寺原真希子(東京弁護団)須田布美子(北海道弁護団)
前列左から
田中昭全(関西原告)堀江哲史(愛知弁護団)こうぞう(九州原告)小野春(東京原告)中谷衣里(北海道原告)木村草太・東京都立大学大学院教授、松中権「Marriage For All Japan」理事
会見リポート
政府の「注視」に募る疎外感
石田 敦子 (毎日放送東京報道部)
法律上の性別が同じカップルが結婚できないことは憲法違反だとして国を相手に全国5カ所で起こしている6つの裁判を、原告団は「同性婚訴訟」ではなく、「結婚の自由をすべての人に」訴訟と名付けている。愛する人と出会えば、その後結婚して家族になることは異性カップルにおいてはごく自然なプロセスになる。と同時に、結婚によって法律、制度、社会的認知等で保障される安定した社会基盤を得ることにもなる。「その道を選ぶ自由が欲しいだけなのに、なぜ」というやりきれない思いが訴訟名に込められていると感じた。
訴訟では札幌、東京、名古屋、大阪、福岡それぞれの高裁判決で、同性カップルが結婚できないことに「違憲」の判断が示された。今回の会見に同席した憲法学者の木村草太氏(写真前列右から2人目)は、5つの高裁で出そろった違憲判断を最高裁で覆すことは難しいとの見解を示し、だからこそ国は最高裁判決を待たずに、ただちに法制化に取り掛かるべきだと話す。
しかし、政府内では昨年10月の参議院本会議で石破茂首相が「国民各層の意見や国会議論、訴訟の状況を注視する必要がある」と発言するなど、法制化への議論を進める気配はない。首相になる前にはこの課題解決に前向きだったが、今はすっかり及び腰だ。霞が関も政府内での停滞をまさに「注視する」に留まっている。その理由については「家族観が変わる」「議論が深まっていない」以上は聞こえてこない。会見では、原告団からこの「注視」という言葉に疎外感や悲しみ、怒りを覚えるという声が多く聞かれた。
一方、各社世論調査では同性婚に「賛成」が半数を超えている。また福岡高裁の判決では同性婚に対する否定的、消極的な国内の不安も法整備で「払拭される」と言及している。法制化に取り掛かれない具体的理由を、原告団でなくとも聞きたくなる。
ゲスト / Guest
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中谷衣里 / Eri Nakaya
「結婚の自由をすべての人に」北海道訴訟原告
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須田布美子 / Fumiko Suda
「結婚の自由をすべての人に」北海道訴訟弁護団
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小野春 / Haru Ono
「結婚の自由をすべての人に」東京一次訴訟原告
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寺原真希子 / Makiko Terahara
「結婚の自由をすべての人に」東京一次訴訟弁護団
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こうぞう
「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟原告
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ゆうた
「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟原告
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永里佐和子 / Sawako Nagasato
「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟弁護団
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堀江哲史 / Satoshi Horie
「結婚の自由をすべての人に」愛知訴訟弁護団
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田中昭全 / Akiyoshi Tanaka
「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟原告
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川田有希 / Yuki Kawata
「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟原告
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大畑泰次郎 / Taijiro Ohata
「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟弁護団
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木村草太 / Sota Kimura
東京都立大学大学院教授
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松中権 / Gon Matsunaka
公益社団法人Marriage For All Japan -結婚の自由をすべての人に」理事