2025年04月22日 17:00 〜 18:30 9階会見場
「『コメ』はいつまで主食かー価格急騰を考える」(3) 齋藤一志・庄内こめ工房代表取締役

会見メモ

齋藤さんは山形県庄内地方の専業農家や農業後継者が集まる株式会社庄内こめ工房の代表取締役を務めており、米の集荷・販売業務などを展開。2023年6月からは日本農業法人協会の会長も務める。

 

経営などに携わってきた農業者の立場から、「コメ」の価格急騰をどのように見ているのか、後継者の育成なども含め日本の農業の振興策はどうあるべきなのかなどについて話した。

米政策の問題点について、減反・流通・規制という3つの項目に分けて言及するとともに令和の米騒動が発生した原因分析や、農業現場の実態と経営面での拡大可能性についても触れた。

 

司会 西山公隆 日本記者クラブ企画委員 (朝日新聞社) 


会見リポート

「昭和時代の流通が今も続いている」

加藤 裕則 (朝日新聞出身)

 1時間半の会見に参加し、農政に関するあいまいな部分が確信に変わり、たくさんの気づきと発見を得た。霞が関にいても霞が関の政策は分からないものだ。自民党と農林水産省による農政は的外れな面があり、硬直化している。昨年夏から続く「令和のコメ騒動」の要因にもなっている。そんなことを強く感じさせる会見だった。

 会見の冒頭、コメ政策の最大の論点に切り込んだ。減反だ。「減反は終了したが、生産調整は続いている」と断言する。農水省は、国が強制的に命じる「減反」はやめ、「コメの生産は自由だ」と主張する。だが、一方で需給見通しを示し、それをもとに各都道府県や農協が自主的に生産量を減らしている現状を指摘した。そしてコメをやめて畑作に転じてもらうために農水省は補助金を出す。そんな消極的な理由とどっちつかずの政策でいい農産物ができるのか。「自ずと『捨て作り』になります」と悲哀のこもった言葉を使った。

 コメの流通にも踏み込んだ。日本のコメの卸売業者は数百社という。韓国は数社とされ、農協から直接、スーパーに届くという。「流通にたずさわる人たちは一生懸命やっている」と配慮を見せながらも「昭和時代の流通が今も続いているようだ」

 農家の意欲をそぐ数々の規制も残る。例えば、農機具を収納する倉庫にも建築基準法が適用される。鉄骨などが求められて農機具よりも高価な倉庫になる。

 コメ騒動についても解説。一昨年、農水省が発表した作況は「101」で平年並みだったが、猛暑による高温障害で「95」ほどの感覚だったという。くず米もとれず、全体の1割の70万㌧ほど不足していたと見ている。毎月、上昇する小売価格を「明らかに便乗値上げ」と喝破した。

 会長を務める日本農業法人会は積極的に輸出に取り組み、日本の農業の可能性を模索する。会見の最後に、令和のコメ騒動の利点として「国民がコメや農業について真剣に考える機会になった」。マスコミにも投げかけられた言葉だ。


ゲスト / Guest

  • 齋藤 一志 / Kazushi SAITO

    庄内こめ工房代表取締役 / President and CEO of Shonai Kome Kobo

研究テーマ:『コメ』はいつまで主食かー価格急騰を考える

研究会回数:3

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