会見リポート
2025年03月04日
16:00 〜 17:30
9階会見場
「ウクライナ」(28) 兵頭慎治・防衛研究所研究幹事
会見メモ
米国で2期目となるトランプ政権がスタートし、ロシアとの間で停戦に向けた交渉が動き出す一方でアメリカのトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の関係は悪化。米国がウクライナへの軍事支援の一時停止を決めたことが報じられる中、防衛研究所研究幹事の兵頭慎治さんが「ウクライナ3年 プーチン大統領の継戦意図と停戦交渉」と題し登壇した。
ロシアの継戦能力は1年以上とされるが、戦力回復に向けた時間稼ぎのために「一時停戦をする可能性は高まっている」。幅広い分野で米国とディール(取り引き)できれば、経済制裁の緩和、国際社会への復帰・復活など想定以上のメリットを引き出せる可能性もあると説明した。一方でロシアの戦争目的は達成していなく、完全な終戦には時間がかかるとの見方を示した。
北朝鮮によるロシアへの派兵やロシア軍が日韓攻撃対象リストを作成したという動きも踏まえ、兵頭さんは「ウクライナ戦争は東アジアに近づいている」と指摘。「西側の緊張が高まれば、程度の差はあっても東アジアに同じ態度をとるようになる」。欧州、中東、東アジアを個別にみるのではなく、相互連携していることを踏まえ俯瞰した戦略を考える必要があるとの考えを示した。
司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)
会見リポート
ロ、一時停戦なら応じる可能性も
佐藤 親賢 (共同通信社国際情報室委員)
トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が口論し決裂した首脳会談が記憶に新しい中、2月24日で開始から丸3年が経過したロシアのウクライナ侵攻について防衛研究所の兵頭慎治研究幹事は、停戦交渉開始を視野に戦闘が激化していると分析、ロシアのプーチン大統領にとってはウクライナ軍に侵入されている西部クルスク州の奪還が和平の前提条件で、一時的停戦に応じても完全な終戦には時間がかかるとの見方を示した。
兵頭氏は、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟阻止と軍事力の大幅な低減、ゼレンスキー政権排除を意味する「中立化」「非軍事化」「非ナチ化」というプーチン氏の目的は達成されていないと指摘。ロシアには戦闘を1年以上続ける能力が残されているとみられ、戦争終結を急ぐ理由はないと説明した。
会談決裂を受けてトランプ氏は対ウクライナ軍事支援の一時停止まで表明。支援停止が続けば夏にはウクライナの継戦能力は失われるとみられている。3月中にもトランプ、プーチン両氏の直接会談がありうるとみる兵頭氏は、それまでにゼレンスキー氏が対米関係を修復しなければ米ロ首脳の協議にウクライナの利益が反映されない恐れがあると指摘した。
プーチン氏は長期戦の構えではあるものの、当面の戦力回復など一時停戦に応じるメリットは大きいとし、米国と欧州の離間を奇貨として「米国抜きのNATO機能不全」を狙ってくるのではないかと予想した。急速な米ロの接近は中東や東アジアにも影響を与えるとし、昨年11月にロシアがウクライナで初めて使用した欧州全域を射程に納める新型中距離ミサイル「オレシュニク」が極東に配備されれば日本も射程内に入ると述べて、「この戦争は東アジアに近づいてくる」と警戒感を示した。
ゲスト / Guest
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兵頭慎治 / Shinji HYODO
防衛研究所研究幹事
研究テーマ:ウクライナ
研究会回数:28