会見リポート
2025年03月17日
15:00 〜 16:30
10階ホール
「地下鉄サリン事件から30年」 中村裕二・地下鉄サリン事件被害対策弁護団事務局長、オウム真理教犯罪被害者支援機構副理事長
会見メモ
オウム真理教による地下鉄サリン事件から3月20日で丸30年を迎えるのを前に、地下鉄サリン事件被害対策弁護団事務局長でオウム真理教犯罪被害者支援機構副理事長の中村裕二さんが、坂本弁護士一家殺人事件から地下鉄サリン事件に至るまでの流れや、なぜ事件を防ぐことができなかったのか、この30年を時系列に振り返るとともに、後継団体による資産隠しの実態などについて写真などを交え話した。
会見には、事件で夫を亡くした高橋シズヱさん(「地下鉄サリン事件被害者の会」代表世話人)、目黒公証役場事務長監禁致死事件で父を殺害された假谷実さんも登壇。高橋さんは「オウム真理教とそこに続く団体によりいまも人生をめちゃくちゃにされている」と今の思いを語るとともに、事件の風化防止に向けて立ち上げたウェブサイト「地下鉄サリン『テロ』事件の記憶」を紹介。「このサイトを入口に若い人にも知ってもらいたい」と述べた。
10億円超の賠償命令が確定したにもかかわらず、支払いに応じていないオウム真理教の後継団体アレフに対し、假谷さんは「支払いに応じていないことへの不満と新しい人を勧誘し組織が存続している怖さがある。負けるわけにはいかない」と述べるとともに、国が一括して立て替えることや後継団体の早期解散を求めた。
※写真左から順に中村さん、高橋さん、假谷さん
司会 江川紹子 日本記者クラブ企画委員
会見リポート
事件「防ぐことができた」
北村 和巳 (毎日新聞社論説委員)
30年前にオウム真理教が起こした地下鉄サリン事件は、首都中枢を狙った未曽有の化学テロとして世界に衝撃を与えた。中村裕二弁護士は会見の冒頭で「発生を防ぐことができたと思っている」と力を込めた。
その6年前、中村さんの司法修習同期である坂本堤弁護士が妻子とともに殺害された。出家信者の親から相談を受け、面会させるよう交渉し、教団の欺瞞を追及していた。現場となった自宅には教団のバッジが落ちていた。遺体の遺棄場所を知らせる手紙も届いた。しかし、神奈川県警の捜査は教団に向かわなかった。
教団による事件はその後も続いたが、警察の対応は後手に回った。中村さんは「宗教団体」「管轄」「組織」「化学兵器」の四つの壁があったと指摘した。重い教訓である。
被害救済に教団の財産を充て、国も給付金を支払う仕組みが被害者たちの努力で実現した。だが、教団の後継団体は、裁判所の賠償命令に従わない。中村さんは、団体の名義にしないことで財産の差し押さえを逃れている実態を具体的に示した。
教団による事件で、駅助役だった夫を亡くした高橋シズヱさんと、公証役場事務長の父を失った假谷実さんも登壇した。故人の在りし日の姿が投影される前で、思い出や、家族を奪われた苦しみを語った。
高橋さんは風化防止のため、事件について伝えるウェブサイトを制作したことを紹介し「関心を持ってもらえれば」と話した。假谷さんは損害の回復には至っていないとして、「国が立て替え、加害者側から取り立てるのが有効な手段」と訴えた。
中村さんは、教団の信者の生活ぶりや子どもたちの様子が撮影された写真を、会場限りで見せてくれた。なぜ、オウム真理教は暴走したのか。これからも考え続けていかなければならない。
ゲスト / Guest
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中村裕二 / Yuji NAKAMURA
地下鉄サリン事件被害対策弁護団事務局長、オウム真理教犯罪被害者支援機構副理事長
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高橋シズヱ / Shizue TAKAHASHI
「地下鉄サリン事件被害者の会」代表世話人
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假谷実 / Minoru KARIYA
目黒公証役場事務長監禁致死事件の被害者・假谷清志さんのご長男
研究テーマ:地下鉄サリン事件から30年