2025年02月28日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「トランプ2.0の世界ー『宿命の子』から読み解く日本の外交処世術」船橋洋一・国際文化会館グローバル・カウンシルチェアマン

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会見リポート

ユーラシア巡る大闘争時代

伊藤 智永 (毎日新聞社専門編集委員)

 世界中が連日、トランプ米大統領の発言と命令に振り回されている。「欧州の政治指導者はアベを見習うべきだ」。第一次政権の米政府高官たちから、暴君との間合いを称賛された安倍晋三元首相。その外交処世術を詳細に検証した話題の本『宿命の子』の著者が、第二次トランプ政権との向き合い方を語った。

 安倍外交を、トランプ氏の癖や思考法を上手に活用したと評価する。防衛力強化では外圧として。為替や関税の要求は巧みに封じ込め、インド・太平洋戦略や拉致問題では日本の旗振り役さえ演じさせた。米元高官は「お世辞と追従は違う」とほめたらしい。そこには「処世術」と呼べるやや軽い語感がにじむ。

 だが回顧談から現状診断へ移ると、船橋氏の口調は重苦しくなった。「ドナルド・シンゾー」関係から一気にレンズを引いて、歴史的に俯瞰すると、2010年代は大国指導者に「強い男」たちが次々と登場し、偉大な歴史を取り戻そうと強い情念とナショナリズムを抱いて格闘する地政学時代の幕開けだった。各勢力圏がむき出しのパワーとマネーにものを言わせ、国際規範、法の支配、多角的枠組みがないがしろにされるジャングルの世界。潮流は20年代、30年代に、もっと深刻になる、というのが船橋氏の見立てだ。

 米外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』の最新論文を紹介しながら、「アメリカ・ファースト」政策で、ユーラシア大陸の「フロントライン国家」は大きな試練に直面し、ウクライナ戦争も台湾危機もそうした視点でとらえるべきだと指摘。「トランプ1・0」は喜劇でもあったが、「2・0」は本物の悲劇になりかねないと警告した。ウクライナやガザの停戦戦略で問われる「次の国際秩序」とは、第二次大戦後体制よりはるか前にさかのぼって考えなければならないのかもしれない。


ゲスト / Guest

  • 船橋洋一

    国際文化会館グローバル・カウンシルチェアマン

研究テーマ:トランプ2.0

研究会回数:4

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