2025年02月25日 15:00 〜 16:00 10階ホール
ペトラ・ジグムント駐日ドイツ大使 会見

会見メモ

連邦議会選挙の投開票が2月23日に行われ、最大野党の「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」が首位となり、2021年以来の政権復帰を確実にした。一方、反移民を掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」が第2党に躍進。CDU・CSUのメルツ党首は第3党となった中道左派ドイツ社会民主党(SPD)と連立交渉を進める考えを明らかにしている。

ペトラ・ジグムント駐日ドイツ大使が登壇し、選挙結果と連立政権樹立に向けた流れや日独関係について話すとともに、新政権下でのドイツの移民政策や気候変動政策の方向性などについての質問に応じた。

 

ジグムントさんは昨年8月に着任。日本記者クラブでの会見は今回が初。

 

司会 菅野幹雄 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)

通訳 ドイツ大使館


会見リポート

移民への不安映したドイツ総選挙

瀬能 繁 (日本経済新聞社編集委員)

 2月23日にドイツで総選挙が実施された。第1党は保守陣営、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)となった。ショルツ首相が率いるドイツ社会民主党(SPD)は第3党に転落。極右ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第2党に躍進したことはドイツ内外で多くの注目を集めた。

 「AfDが新政権に参加することはありません。どの政党もAfDとは組まないと明言しているからです」。ジグムント大使は明言し、極右台頭の懸念の払拭に努めた。

 ドイツで最も有力視される次期政権の枠組みはCDU・CSUとSPDによる大連立。この組み合わせなら連邦議会の過半数を確保できる見通しで、AfDの協力を得ずに政権を運営できる環境がひとまず整う。CDUのメルツ党首を次期首相とする連立政権樹立に向けた協議が4月中に整うかが次の焦点だ。

 それでも戦前のナチス台頭を許したドイツで極右勢力が伸長したことは、ドイツ国内外で大きな不安を残した。「各地で(移民による)襲撃事件がみられ、移民が選挙戦で注目度の高いテーマとなった」「外国人を吸収する能力が限界に達してしまったという意識が多くの人々の中にあった」。大使は率直に認めた。

 ドイツ経済は2年連続でマイナス成長に陥った。国防費を増額するための債務ブレーキ法改正、ロシアのウクライナ侵略で見直しを迫られた気候変動・エネルギー対策、そしてトランプ米大統領が繰り出す高関税政策への対応など、ドイツの難題は山積している。

 トランプ氏がより過激な「米国第一」に走り、ルールに基づく国際秩序に背を向けつつある今、日欧の間に価値観を共有するパートナーとして接近する磁力が働く。「日・欧州連合(EU)の経済連携協定の潜在力を完全に活用しているのか、考えてみる必要がある」。大使は連携強化の好機を見逃さないしたたかさものぞかせた。


ゲスト / Guest

  • ペトラ・ジグムント / Petra SIGMUND

    駐日ドイツ大使 / Ambassador to Japan

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