会見リポート
2025年01月27日
13:30 〜 14:30
10階ホール
ワリード・シアム駐日パレスチナ大使 会見
会見メモ
イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘を巡り、パレスチナ自治区ガザで停戦合意が発効してから1週間あまり。ワリード・シアム駐日パレスチナ大使が会見に臨んだ。2023年10月の戦闘開始からの1年3カ月の惨状を伝えるとともに、国際社会に対し「国際法と規則を遵守することを求める行動にともに参加してほしい」と訴えた。
イスラエルで、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の国内での活動を禁じる法律が1月30日にも施行される見通しとなり、同国がUNRWANにエルサレムからの退去を求めたことについては「パレスチナ自治区での活動をイスラエルが禁じる権限はない」と批判した。
司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)
会見リポート
「占領解消」の必要性訴え
吉岡 良 (時事通信社外信部編集委員)
記者会見はパレスチナ自治区ガザで1月19日に発効した停戦を受けて行われた。停戦まで1年3カ月超に及ぶイスラエルの軍事作戦はガザに壊滅的な被害をもたらしたが、シアム大使は攻撃の中で生き抜いたガザ住民の強靱さを強調。一方で「問題の核心を解決しなければ、破壊は繰り返される」と訴え、恒久的な復興のためには「法の支配」に基づくイスラエルの占領解消とパレスチナ国家樹立が必要だと説いた。
大使はイスラム組織ハマスのイスラエル奇襲があった2023年10月から停戦発効まで続いた対ガザ軍事作戦の「471日間」の惨状を克明に訴えた。ただ、それ以上に、パレスチナ人に対する抑圧は、イスラエルが建国されて多数のパレスチナ難民が発生した1948年以来「76年間」続いているという事実こそが問題だと力説。ハマスの奇襲に戦争犯罪行為があった可能性は否定しないものの、長期にわたる占領下で繰り返されてきたパレスチナ人に対する残虐行為や人権侵害の方がはるかに深刻だと論陣を張った。
目下の課題である停戦後のガザ統治の在り方については、イスラエルが一方的にハマスの排除を求めていることに反発。「誰が権力を握るかを決める権利があるのはあくまでパレスチナ人で、ほかの何者でもない」と述べた。
会見2日前の1月25日には、同20日に就任したばかりのトランプ米大統領がガザ住民の近隣諸国への移住を提案し、国際社会で「ガザ攻撃の結果としての強制移住、民族浄化」への懸念が生じた。大使は「パレスチナ人はどこにも行かない。むしろ(過去イスラエルに故郷を追われた人々に)帰還を求めている」と一蹴した。トランプ氏の親イスラエル姿勢を巡っては「これまで残酷な76年間を生きてきた。(米大統領の任期である)4年追加されたところで何とかなる」と語った。
ゲスト / Guest
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ワリード・シアム / Waleed SIAM
駐日パレスチナ大使 / Ambassador, Representative of the Permanent General Mission of Palestine