会見リポート
2025年02月21日
16:00 〜 17:30
10階ホール
「ウクライナ」(27) 松田邦紀・前駐ウクライナ大使
会見メモ
ロシアがウクライナに軍事侵攻してから2月24日で丸3年を迎えるのを前に、米国がロシアとの間でウクライナの停戦に向けた動きを加速している。2021年10月から3年にわたり駐ウクライナ大使を務めた松田邦紀さんが登壇。この間の戦況を振り返るとともに、停戦に向けた動きをどうみているのか、今後の見通しや戦後処理をめぐる課題、日本の役割などについて話した。
司会 小栗泉 日本記者クラブ企画委員(日本テレビ)
会見リポート
停戦機運へのとっかかり
根本 裕子 (共同通信社外信部)
早期終戦を掲げるトランプ米政権が始動し、ウクライナの頭越しに和平への道筋をつけようとしているかのように見える。ロシア寄りの発言にゼレンスキー大統領は反発も。松田邦紀前駐ウクライナ大使は、そうした指導者らの発言を過度に取り沙汰することは「ロシアを利する」とし、冷静に情勢を見る必要性を説いた。
ゼレンスキー氏は2024年9月、外交方針を盛り込んだ「勝利計画」を提示。松田氏は米政権が強引に進めているかのような一連の動きは、こうしたウクライナの政策の延長線上にあると指摘した。各国に立場の違いがあることは当然だとし「停戦への機運の最初のとっかかりを見ている」と前向きにとらえた。
ウクライナにとって公正な和平が達成されなければ「多くの国に間違ったメッセージを送ることになる」と警告し、和平に向けた議論への日本の積極的な関与を望んだ。対ロ制裁を緩めるべきではないとも強調した。
21年10月に着任し、外交の最前線に立った松田氏は、この2月で丸3年となる侵攻の全容を見てきた。主権国家としてのウクライナをなくそうとしたロシアの目的達成は「失敗している」と指摘。フィンランドやスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟や旧ソ連諸国の離反、後ろ盾をしてきたシリアのアサド政権崩壊などを挙げ、「ロシアの安全保障が弱体化した」と述べた。
甚大な損失を生みながら攻勢をかけるロシアに対し、ウクライナの主たる対抗措置は無人機(ドローン)だった。日本がウクライナから学ぶべきこととしてドローン技術を挙げた他、社会のデジタル化や、軍を補完する役割を担う「領土防衛隊」の存在も注目すべきだとした。
戦後処理の一つとして、侵攻を止めることができなかった国連の改革の必要性を強調した。
ゲスト / Guest
-
松田邦紀 / Kuninori MATSUDA
前駐ウクライナ大使 / former ambassador to Ukraine
研究テーマ:ウクライナ
研究会回数:27