会見リポート
2025年02月25日
11:00 〜 12:00
10階ホール
セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使 会見
会見メモ
ロシアがウクライナに侵攻してから24日で丸3年を迎えた。米国のトランプ大統領が選挙戦で公約した「ウクライナの早期停戦」に向けロシアと交渉を進める中で、セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使が登壇。「今年中に何らかの停戦が実現することを信じている」と期待を示した。
和平計画については「真剣に取り組む段階に来た時にはウクライナも参加する形になるだろう」と述べるとともに「譲歩は必要になる。理にかなった提案なら受け入れ議論する用意はある」とし、安全の保証を与えられるのかどうかが一番大事なポイントになると述べた。
北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナの加盟については、「ヨーロッパの中で一番力を持っており、経験が豊富なのはウクライナ」と強調。ウクライナから働きかけるのではなく「NATOがウクライナを招待することが自然の流れ」との考えを示した。
コルスンスキー大使は春にも離任する予定。会見は予定していた1時間を大幅に超過し2時間半にわたった。
司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)
通訳 西村好美 サイマル・インターナショナル
会見リポート
日本に「永久に感謝」
佐藤 達弥 (朝日新聞社国際報道部)
4月ごろの離任が予定されているコルスンスキー大使。日本記者クラブで通算7回目となった記者会見は、米国とロシアの停戦協議が続くさなかで行われた。ロシアのウクライナ侵攻を一貫して非難してきた日本に「永久に感謝する」とし、「(自らの)立場を過小評価してはならない」とエールを送った。
大使は会見で、約2700人の避難民を受け入れるなどした日本のウクライナ支援に触れた。会見当日も、大使館に出勤した際に国旗と同じ青と黄の花束が置かれているのを見つけたといい、子どもと思われる字で「ウクライナに栄光あれ」と書かれたメモが添えられていたという。
会見では、今の戦況をめぐるやりとりもあった。4万人以上のウクライナ兵が死亡する中で「今まで通りの戦い方は難しいのでは」と指摘されると、「我々は領土のためでも鉱物資源のためでもなく、生き残りをかけて戦っている」と反論した。
大使は、ロシアへの個人的な思いにも触れた。ロシア語とウクライナ語を半々に話す家庭で育ったと明かし、「私はロシア文学を知っており、彼ら(ロシア)を敵と思ってきたことはない」と強調。その上で、「我々が自分たちの未来を築いていくために、(ロシアには)我々を放っておいてほしい。(ウクライナの)未来は欧州の中にある」と訴えた。
大使は米ロの停戦協議について、「我々と密に調整した上で決めてほしい。(合意内容には)安全の保証が入っていなければならない」と述べ、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を重ねて求めた。
会見後の2月末に行われた米国とウクライナの首脳会談は、両首脳の口論の末に決裂した。米側はウクライナのNATO加盟を「現実的ではない」と認めていない。大使の言葉こそがウクライナが切実に求めるものであり、同時に米側との隔たりの大きさも示していると改めて感じる。
ゲスト / Guest
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セルギー・コルスンスキー / Sergiy KORSUNSKY
駐日ウクライナ大使 / Ambassador of Ukraine to Japan