2024年12月19日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「トランプ2.0」(2) 合六強・二松学舎大学准教授

会見メモ

国際政治学、米欧関係史、ヨーロッパの安全保障を専門とする二松学舎大学准教授の合六強(ごうろく・つよし)さんが登壇。第2期トランプ政権が、長期化するロシア・ウクライナ戦争と欧州の安全保障環境、国際秩序にどのような影響を与えるのかについて話した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信社)


会見リポート

トランプ再登板でもウクライナ侵略は止まず

常盤 伸 (東京新聞編集委員兼論説委員)

 ロシアによるウクライナ侵略戦争は2月下旬に丸3年の節目を迎える。収束の見通しは立たない中で、1月20日にウクライナ支援に消極的で早期停戦に熱意を示すトランプ氏が米大統領に再び就任する。合六氏は、トランプ2.0での停戦交渉の見通しや欧州安全保障に及ぼす影響などについて、バランスの取れた見解を提示してくれた。 

 合六氏はウクライナに知己も多いが、和平実現には悲観的な見方だ。トランプ政権の仲介で何らかの交渉が行われる可能性は高いが、プーチン大統領の戦争目的は「領土拡大だけでなくウクライナの主権やアイデンティティーの破壊」にあると強調。「目標を下方修正しない限り交渉に真剣に取り組まないだろう」と核心に迫る。

 一方、ウクライナ側が交渉に応じる条件は「安全の保障が全て」だ。停戦合意後もロシアが再侵攻する可能性があるからだ。トランプ新政権が提示する可能性のある二国間の安全保障は非常にもろく、NATO加盟以外に確実な保障はないという。結局「戦闘が一時的に起きたり、膠着状態になったりと不安定な状況が長期化するだろう」と予測した。

 大規模戦争が続く中、欧州の安全保障体制は、トランプ再登板でさらに深刻化するだろう。かつて「脳死状態」とも言われたNATOは、ウクライナ戦争で結束を固めたが、今度は「米国が遠心力として機能し、結束が乱れる可能性がある」。トランプ氏がNATO加盟国に防衛費の負担増を求めるなどして「米欧間に隙間風が入れば、ロシアがそこを突く事態も想定される」と警鐘を鳴らす。独仏で政権の基盤が揺らぐ中、「NATOの重心が対ロ脅威認識を高める東欧や北欧、バルト諸国に移りつつある」との現状認識は興味深い。「日本も英独仏だけでなくこうした諸国との議論を進めるべきだ」との合六氏の提言を日本政府は重く受け止めるべきだ。


ゲスト / Guest

  • 合六強 / Tsuyoshi GOROKU

    二松学舎大学准教授 / Associate Professor, Faculty of International Politics and Economics Nishogakusha University

研究テーマ:トランプ2.0

研究会回数:2

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