2024年11月28日 12:00 〜 13:00 9階会見場
清田明宏・国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)保健局長 会見

会見メモ

昨年10月から戦闘が続くパレスチナ自治区ガザで支援活動を続ける国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)保健局長の清田明宏さんが一時帰国の機に登壇。ガザの実情を動画で紹介するとともに、昨年10月から今にいたるUNRWAの支援活動について説明した。

イスラエルでは、UNRWAの国内活動を禁止する新法を来年1月末に施行する予定となっている。UNRWAはガザの一次医療の5割を担っているほか、現地で活動する職員の数もWHOの40人に対し1000人と多い。会見で清田さんは「ガザにおいて代替わりのない組織」と強調。日本政府に対して、支援の継続とイスラエルに法律をとめるよう求めてほしいと訴えた。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞社)


会見リポート

人間の尊厳の崩壊がそこに

立田 成美 (共同通信社外信部)

 1948年のイスラエル建国直後の第1次中東戦争で生まれた、パレスチナ難民を支援する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)。その活動が、イスラエル国会で可決したUNRWAの国内活動を禁止する新法によって危機にさらされている。「(UNRWA設置を定めた)国連総会決議を1カ国の意見で止めるというのは、国際社会の枠組みの危機だ」。法施行は来年1月末に迫る。保健局長の清田明宏さんの言葉の端々からは、ただでさえ不十分なガザの人道支援が停止してしまうことへの焦りが感じられた。

 イスラエルはUNRWAが、昨年10月にイスラエルへの越境攻撃を実行したイスラム組織ハマスと深いつながりにあるとして、国内活動を許さないとしている。清田さんは疑惑の目を「深刻に受け止めている」と述べ、真相究明に向けて「イスラエル側と協力したい」と説明。一方で、イスラエル側から主張を裏付ける証拠は提示されておらず、国連の調査報告書も、職員9人が奇襲に関与した「可能性がある」との認定にとどまっていると語った。

 「パレスチナ難民にとって、難民のことを忘れずに支援している国連機関はUNRWAだけ。そのUNRWAがなくなるということは、パレスチナ問題が終わってしまうということ」。ガザ支援の主翼を担ってきたUNRWAを狙い撃ちした法施行が与える余波の大きさを説き、活動継続が必要だと繰り返し訴えた。

 清田さんは昨年10月の戦闘開始後、ガザに3回入っている。会見では自身が撮影した写真や動画を使いながら現状を報告した。動画では、ごみの山に多くの家族が集まり、ごみ袋を手に持って生活に使えそうなものを探していた。これまで長くガザとかかわってきた清田さんにとって、一番ショックな出来事だったという。「今までガザで見たことがない光景だった。人間の尊厳の崩壊が起きている」


ゲスト / Guest

  • 清田明宏 / Akihiro Seita

    国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)保健局長 / Director of Health Programme, UNRWA (United Nations Relief and Works Agency for Palestine Refugees in the Near East)

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