2024年11月18日 15:30 〜 16:45 10階ホール
石渡明・前原子力規制委員会委員 会見

会見メモ

2014年9月から今年9月までの10年にわたり原子力規制委員会の委員を務めた石渡明さんが登壇。自然ハザードに対するこの間の原子力規制委員会としての対応を振り返るとともに、能登半島地震で得た知見と今後の課題などにも触れた。

自然ハザードが多い日本では「厳しい原子力規制が必要になる」との考えを示した。

石渡さんは、敦賀原子力発電所2号機直下の断層を巡る審査で活断層の可能性を否定できないとし、新規制基準に適合しないという結論をまとめたほか、原子力発電所の60年超運転を可能にする法改正に伴う規制制度の変更に際し、規制委の会合で最後まで反対したことで知られる。

質疑応答では、敦賀2号機について規制委員会が正式に不合格としたことへの受け止め、60年超運転を可能とする法改正に反対した理由などについての質問も寄せられた。

 

司会 行方史郎 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞社)


会見リポート

規制の緩み許さない「たが」

鎭目 宰司 (共同通信社編集委員)

 9月に退任するまで10年、原子力規制委員会で地震など自然災害に関する分野を担当した。私はその最初の1年間、担当記者を務めた。

 「かたい人だな」という印象は、今も変わらない。取材へのガードの堅さもそうだが、原発の60年超運転を可能にした制度変更は筋が通らないと1人で反対した意志の固さは世間に広く知られている。放っておけば緩もうとする原子力規制を締める「たが」のような存在だったのだろう。

 岩石や地質の研究者だ。フランスの大学から金沢大、東北大を経て規制委に。旧原子力安全・保安院時代から前任委員の島崎邦彦さんに至るまで、原発の耐震審査では東京大の地震学者が大きな役割を担ってきた。異色の存在と言える。

 人事選考に当たる規制委の事務方は、大学教授を辞めて委員に転じてもらうのは難しいかもしれないと案じていたが、直談判で快諾を得たという。仙台で東日本大震災を体験したことで、使命感を強く持つに至ったと会見でも述べていた。

 在任中は、さまざまな負の遺産に苦労したはずだ。原子炉から約250㍍の至近距離に大活断層がある日本原子力発電敦賀原発(福井県)はその代表格。かつての米国のように「400㍍以内に活断層があったらアウト」というルールがあれば話は早かったが、今も昔も日本にはない。近くに活断層はあってはならないし、ないことになっているという暗黙の了解があっただけだろう。

 苦肉の策として生み出した「原子炉直下の地盤がずれたらアウト」というルールを適用し、敦賀2号機は審査に不合格となった。当たり前の常識が通じない世界で道理を貫き通すのは容易ではない。「靴の裏からかゆいところをかくような感じ」。それでも、十分な時間をかけて審査をやりきったと断言していた。

 そう言えば会見での表情はやや硬かった。もう少し笑顔も見てみたい。


ゲスト / Guest

  • 石渡明 / Akira ISHIWATARI

    前原子力規制委員会委員 / Former Commissioner, Nuclear Regulation Authority (NRA)

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