会見リポート
2025年02月18日
09:30 〜 11:00
10階ホール
「2025年経済見通し」(5) 中曽宏・大和総研理事長
申し込み締め切り
ウェブ参加:締め切りました会場参加:締め切りました
会見リポート
国債格下げに強い危機感
原 真人 (朝日新聞社編集委員)
1990年代後半の金融危機、2008年のリーマン・ショックなど日本経済が壊滅寸前の危うい時期に日本銀行で指揮をとった。金融危機対応のプロ中のプロだ。経験を重ねるなかで「日銀の重要な使命が金融システムの最後の防衛線であることを強く自覚した」。やれることはやってきたという強い思いがある。
世界は米トランプ大統領の関税戦争、中国の不動産バブル危機など、不安のタネが今も尽きない。主要国の中央銀行が膨らませた金融資産、政府や民間が抱える債務はリーマン危機時よりはるかに巨大に膨らんでいる。「この状態が本当に持続可能なのかどうか」。そう疑問を呈す。
自身が日銀副総裁としてかかわった異次元緩和の「負の遺産」の処理も気になるところだ。日銀は600兆円という巨額の保有国債の減額計画に着手したばかりだが、うまく着地させるには誰かがその国債の受け皿役を果たす必要がある。
国内に引き受け手が不在なら海外投資家に依存するしかないが、その時、日本政府が今のような借金財政を続けたらどうなるか。大和総研の試算では、長期金利は2040年に6~7%に急騰してもおかしくないという結果が出た。本当にそうなれば、1千兆円超の国債発行残高がある日本政府は、利払い負担が大きすぎて首が回らなくなる。
民間格付け会社による日本国債の格下げリスクにも注意が必要だという。「その時には邦銀の格付けもすべて下がる。日本の金融機関は再びジャパン・プレミアムを課され、大変なことになる」
財政と金融政策はお互い強く影響しあう。にもかかわらず日銀幹部たちは政府の借金膨張に物申すのを遠慮してきた。もはやそんなことは言っていられないのではないか――。
そう質問すると、冷静に、だが重たい返答があった。「もう(日銀が)発信してもいい時期かもしれない」
ゲスト / Guest
-
中曽宏 / Hiroshi NAKASO
大和総研理事長 / Chairman, Daiwa Institute of Research Ltd.
研究テーマ:2025年経済見通し
研究会回数:5