2024年10月25日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「巨大地震を考える」(3) 笠原順三・東京大学地震研究所名誉教授

会見メモ

海洋地震を専門とする笠原順三・東京大学地震研究所名誉教授が海溝型巨大地震の発生のメカニズムや最近の地震研究で明らかになってきていることなどについて話した。

 

司会 倉澤治雄 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

地下流体の観測で地震予測へ/能登半島地震でも同現象

久慈 省平 (テレビ朝日広報局・元災害報道担当部長)

 「流体の動きを観測していれば、能登半島地震も予測できたと思う」。海洋地震学の第一人者で、テレビ解説でも知られる笠原名誉教授はこれまでの研究成果を交えながら、「地震と水」の関係について語った。

 プレート運動、断層運動、地震波といった馴染みのある現象に加えて、専門領域のデータも駆使し、「巨大地震の起こり方は単純ではない」と、さまざまな地震のタイプや発生原因、メカニズムについて説明。さらに、地下の流体の存在が巨大地震発生と密接に結び付いていることや、地震予測の可能性にも話を広げた。

 水を含んだ海洋プレートが日本列島を乗せた陸のプレートの下に潜り込み、その水が地表近くまで上昇して活断層に浸入、滑りやすくなることで巨大地震につながる。水の動きは地震波の反射から観測が可能で、笠原名誉教授は「水の動きを見ていれば次に起こりそうな地震はかなり予測できる」と断言した。

 今年元日にマグニチュード7・6、最大震度7の大地震が起きた能登半島では数年前から群発地震が起きていた。その地下で流体が観測されていたことは大きな注目を集めたが、笠原名誉教授は一連の地震に流体が関係していることを早くから指摘していた。

 では、地震予測につながる「地震と水」の研究はどこまで進んでいるのだろうか。笠原名誉教授は淡路島の地下で実施した空気注入試験や、静岡県掛川市で計画した関連研究についても紹介したが、いずれも「予算の関係でできなくなった。今は誰もモニタリングしていない状態」だと明かした。地震多発国にもかかわらず、このような研究予算さえ枯渇している実態に驚かされた。

 クラブ恒例の揮ごうは「真」の一文字。笠原名誉教授は「トゥルー、本当のことは何かをずっと調べてきたので」と穏やかにほほ笑んだが、真実に迫ることが難しい日本の現状を危ぶんでいるようにも思えた。


ゲスト / Guest

  • 笠原順三 / Junzo KASAHARA

    東京大学名誉教授、静岡大学防災総合センター客員教授 / professor emeritus, University of Tokyo

研究テーマ:巨大地震を考える

研究会回数:3

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