2024年09月30日 16:30 〜 17:30 10階ホール
袴田巖さん・姉ひで子さん、小川秀世弁護士(袴田事件弁護団事務局長) 会見

会見メモ

1966年6月に静岡県清水市(現静岡市清水区)で一家4人が殺害された事件で、死刑が確定した袴田巖さんのやり直しの裁判(再審)で、静岡地裁は26日、袴田巖さんの無罪を言い渡した。

姉のひで子さん、袴田事件弁護団事務局長を務める弁護士の小川秀世さんが判決から4日後に会見に臨んだ。登壇を予定していた巖さんは、体調不良のため欠席した。

ひで子さんは「嬉しいやら感激するやらで、涙がとめどなく出て、1時間ぐらい涙が止まりませんでした」と無罪判決を受けたときを振り返った。前日に開かれた判決報告集会で、巖さんが「無罪勝利が完全に実りました」と述べたことについては、「無罪になったときに言いたくて、拘置所で復唱していたと思う」と胸中を察した。

小川さんは、今回の判決(要旨)のポイントを解説。検察、警察の連携により証拠が捏造されたことが認定されたことを評価する一方で不十分な部分もあると批判した。

質疑応答で、捜査機関が証拠を捏造したことに対する責任追及のあり方を問われた小川さんは「いまの刑事手続きでは捜査の密行性により(捜査機関が)都合の悪い事実を隠していたとしても事後に検証できない」との問題認識を示し、現場検証の際に写真を撮るだけでなく、すべて録画するなど事後に検証できる仕組みに変えていくべきだと強調した。

 

 司会 井田香奈子 日本記者クラブ企画委員 (朝日新聞社)


会見リポート

ひどい報道は時代のせいか

佐藤 章弘 (静岡新聞社社会部)

 静岡地裁の再審無罪判決から4日後の9月30日、袴田巖さん(88)の姉ひで子さん(91 )と弁護団の小川秀世事務局長が日本記者クラブで会見した。この間、ひで子さんは判決当日の報告会見はもちろん、28日は東京で日弁連主催の集会に、29日には静岡で静岡県弁護士会主催の集会にそれぞれ出席。「ちょっと、くたびれた」と口にしていたが、会見ではそのそぶりも見せず、判決の受け止めや弟の様子を気丈に語った。

 再審開始の可否を判断する再審請求審で、袴田さんの再審開始を認めた二つの裁判体が捜査機関によって証拠が捏造された「疑い」や「極めて高い可能性」を指摘してきた。再審判決の構造を説明した小川弁護士は、三つの証拠捏造があったと明確に認定した判断について「再審開始決定よりも踏み込んだ。冒頭で証拠から排除し、残りの証拠では有罪は認められないとした内容は分かりやすく、大胆」との認識を示した。

 一方、判決は弁護団が無罪を証明するとしたDNA型鑑定の信用性などを否定した。小川弁護士は「(捏造と認定した)『5点の衣類』以外は弁護団の主張をあまり採用せず、これまでの間違った裁判所の判断にのっとっているものが多い。検察の〝証拠隠し〟についても一言も言っておらず大いに不満」と述べた。

 質疑応答で、ひで子さんに事件当時の報道を尋ねてみた。「よくもひどいことを書いてくれたと思うが、あれは警察の言う通りに書いただけだと思っている。あの時代は、そういうことを平気で書いた。(今は)何とも思っていません」。ひで子さんは「あの時代は」としたが、果たして現在はどうか。事件報道に携わる一人一人が改めて自らに問いかけるべき重い言葉だと受け止めた。

 会見が終わり、帰り際のひで子さんと居合わせた。思いがけず手を差し出され、握手した。温かく、この姉あっての再審無罪だと思った。


ゲスト / Guest

  • 袴田ひで子 / Hideko HAKAMATA

  • 小川秀世 / Hideyo OGAWA

    袴田事件弁護団事務局長・弁護士

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