2024年09月19日 16:30 〜 18:00 9階会見場
「2024 米大統領選」(11) 高橋和夫・放送大学名誉教授

会見メモ

国際政治、中東問題を専門とする高橋和夫・放送大学名誉教授が、ガザ地区の戦闘やイランの動向、中東の視点からみた米大統領選について解説した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

戦線拡大するイスラエルの狙いと、ジレンマ深める米国

佐藤 武嗣 (朝日新聞社編集委員)

 イスラエルが、パレスチナ自治区ガザへの執拗な攻撃を継続し、隣国レバノンにも戦線を拡大するのは、米国を巻き込もうとの意図がある。一方、イスラエル擁護を続ける米国は、世界での孤立が進むばかりか、国内世論が分断し、中東政策で身動きがとれないジレンマに陥っている――。中東はもとより、米国政治にも詳しい高橋氏の話は、そうした構図をより鮮明にするものだった。

 イスラエルによるガザ攻撃の苛烈さは映像などで認識していたつもりだったが、高橋氏が「地獄絵」と表現し、ガザで「1人当たり35kg」の爆弾が投下されている計算との紹介には、強い衝撃を受けた。

 一方、世界的にイスラエル批判とパレスチナへの同情が醸成され、パレスチナ問題の解決なしに中東を安定されるのは困難だと知らしめたことで、「ハマスは政治的に勝った」との分析にもうなずけた。

 11月の米大統領選では、民主、共和両党の支持率が拮抗し、大統領選のカギを握るスイング・ステートと呼ばれる激戦州において、中東情勢が影を落としているとの報告も興味深かった。中東系米国民の有権者の割合が最も多い激戦州ミシガンではイスラエル擁護を堅持するバイデン大統領への反発で、民主党予備選で、約13%が事実上の「白票」を投じ、失望と怒りを示したという。

 同党の大統領候補は、バイデン氏より、副大統領候補選びなどで「イスラエル寄り」の色を薄めようとするハリス氏に交代した。ただ、絶大な資金力と政治的影響力を持つユダヤ系か、若者にも広がるパレスチナへの同情心のどちらに寄り添うのか、いまだ態度は鮮明ではない。

 イスラエルの軍事行動の拡大に、米国はどう対応するか。イランの行動も含め先行きは不透明だが、米国が惰性を続ければ、「法の支配」を唱える正当性が傷つき、権威主義国家を利することだけは間違いない。


ゲスト / Guest

  • 高橋和夫 / Kazuo TAKAHASHI

    放送大学名誉教授 / Professor Emeritus, Open University of Japan

研究テーマ:2024 米大統領選

研究会回数:11

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